日高市メガソーラー訴訟「地裁で却下」の重大背景 山の斜面の太陽光発電設備、土砂災害への懸念
裁判で原告側は「林地開発許可を得るための手続きに入る手前で、条例により手続きを進めることが阻害される。そのような条例自体が違憲」と主張していたが、判決は条例と法律の関係や条例の内容の是非に踏み込まずに、訴えを門前払いした格好だ。
判決を受け、日高市は「本市の主張が認められたものと受け止めております」とする市長コメントを発表。原告側の錦織淳(にしこおり・あつし)弁護士は「判決の内容を見て検討するが、9割9分控訴する」と話した。
住民がメガソーラーに反対した理由
TKM社のメガソーラーの事業計画地は、曼珠沙華の群生地として知られる「巾着田」からもよく見える。日高市は、「遠足の聖地」として巾着田や里山や丘の林の風景を「売り」にしており、計画は波紋を広げた。また、予定地の山の向かい側には大きな住宅団地があり、住民たちは「ふだん眺め、癒しになっている景観が損なわれる」と反対の声を上げた。
一方、反対運動の中心となった「高麗本郷メガソーラー問題を考える会」が2019年5月に埼玉県知事や日高市長に送った要望書は、「土砂災害が起こるリスク」を真っ先に掲げている。
「考える会」の住民らは2019年春、地質学の専門家を招いて予定地の調査を行った。その結果、事業計画地の一部の工区が土石流危険渓流の上流の集水域に当たることや、ここの地質の特殊性から豪雨の際に起きる地層の中の水の流れに着目。斜面の林地を伐採して太陽光パネルを並べることは、「土砂災害リスクを増大させる」と訴えた。
山の斜面の林を伐採して太陽光パネルを敷くことと土砂災害のリスクの関係については、関係者の理解が遅れた。例えば、今から5年前の2017年、群馬県みなかみ町で山の上のゴルフ場跡地へのメガソーラー建設をめぐる住民たちの懸念に対し、町長は町議会で「大雨の際にも太陽光パネルの間から雨水は地面に落ちて吸い込まれるので問題ない」という趣旨の答弁をしている。
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