日高市メガソーラー訴訟「地裁で却下」の重大背景 山の斜面の太陽光発電設備、土砂災害への懸念
富士見町総務課の岡村成人(なりと)さんは、こう理由を説明する。「入笠山(にゅうかさやま)と八ヶ岳に囲まれ、町の広範囲がイエローゾーン(土砂災害警戒区域)やレッドゾーン(土砂災害特別警戒区域)に指定されており、災害リスクへの懸念が強い。地元出身の政治家の別荘で敷地内の事業計画が浮上した帰去来荘のケースをはじめ、トラブルが多発しています。市街地のごくわずかなエリアを外して抑制地域を指定すると、今度はそこでまたトラブルが起きてしまう。町全域を抑制区域とすることで、住民とトラブルになるような事業はやめていただきたい、という意思表示をしました」
山々に囲まれた地域ならではの事情のようだが、逆に平坦な地形を理由として全域を抑制地域とした自治体もある。埼玉県川島町は、2021年1月1日施行の条例と施行規則により、町内全域を抑制区域とした。理由を聞くと、「川島町は全域がほぼ平坦な地形。地形的な優劣順位をつけがたいので、であれば町全体を無秩序な設備の設置から守るという意味で、全体を抑制区域に指定しました」(町民生活課)との答えだった。
川島町を含む埼玉県比企郡は、2017年ころから太陽光発電設備の建設ラッシュに見舞われた。今年4月、比企郡の小川、越生、滑川、嵐山、鳩山、ときがわの6町では、太陽光発電設備の設置を規制する条例を施行した。このうち小川、越生を除く4町も、町全体を抑制区域に指定した。
住民から寄せられた声
鳩山町は「多くの住民から『見る山見る山、切り崩されて町内を太陽光発電設備だらけにしていいのか』という声が寄せられ、議員からは『ゴルフ場の開発ラッシュがあった時同様、規制すべきではないか』と指摘された。町長以下の会議で『抑制区域を一部の場所に限定する必要があるのか』が検討された結果、町内全域の指定になった」(産業環境課)と説明する。
小川町は、2050年までに二酸化炭素の排出を実質ゼロにする「ゼロカーボンシティ」を宣言している。そこで、抑制区域には土砂災害警戒区域や同特別警戒区域、保安林区域、河川区域などを指定するにとどめ、一方で一定規模以上の事業者には町長との協定締結を義務づけた。
「太陽光発電設備を適正な場所につくるのであれば、抑制する必要はない。町内全域を抑制区域にしてしまうと、どこもダメ、適正でも作ってはダメということになってしまいます。日高市を相手取った訴訟などの事例を意識し、弁護士と相談しました」(岡部孝一環境農林課長)という。
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