今の若者「皆の前でほめられたくない」心理の正体 「いい子症候群」にモヤモヤする上の世代の目線

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そして「普通」に関してはこうだ。

<「やっぱり大企業の事務職がいいかな。営業は向いてない。少人数の人と話すことは嫌いじゃないけど、誰かに何かを提案するとか絶対無理。いつか地元に戻りたいとも思うから、それならやっぱり公務員にしようかな。親も何となくそうしてほしいみたいだし」(230〜231ページより)>

自分は特別なことを望んではおらず、毎日、平穏に過ごせればいいというような状態を、彼らは「普通」と呼ぶのだ。が、金間氏はここに食いついている。大多数の大人たちに代わって本音をぶつけているといってもいい。

あなたの言う「平穏」や「普通」は最上級の待遇

<冗談じゃない。
いい加減に夢から覚めなさい。
あなたの言う「平穏」や「普通」とは、今の日本で得られる最上級の待遇にある。
もしあなたの周りにそんな待遇を得ている(ように見える)人生の先輩がいたとしたら、それは宝くじ当選級の運の良さを持った人か、あるいはものすごい努力と苦労を重ねてきたかのどちらかだ。
むろん、おそらくその人は「宝くじ」には当たっていない。
そして、あなたもまた「宝くじ」には当たらない。
もう一度言うが、いい加減に夢から覚めなさい。
(231ページより)>

おっしゃるとおりで、仕事の現場に「普通」はありえない。次から次へと問題が起こり、現場にいる人の神経をすり減らす。それが現実だ。しかし、無駄なようにも感じられるそうしたトラブルを越えていくことで、学生がビジネスパーソンへと成長していくのも事実。

にもかかわらず、こういう話を聞いた若者の何割かは「引くわー」と感じるのだろうか? だが、これは決してよくある説教のたぐいではなく、もっと切実な問題だ。だからこそ若者諸君は、金間氏のメッセージを真摯に受け止めてほしいのだ。

そして、彼らと対峙しなければならない上司や先輩の方々には、金間氏のメッセージに共感してほしいものである。いや、本書に目を通してみれば、きっと共感したくなると思う。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「WEBRONZA」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)など著作多数。

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