「女性にうれしい低カロリー」に抱く違和感の正体 言葉に潜む「考え方の偏り」を正しく理解しよう

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ほかにも、「肌が白い=美しい」というバイアスによる「美白」ではない「色白」や、肌の色のステレオタイプを作らないために、「肌色」ではなく「うすだいだい色・ペールオレンジ」といった表記の変更など、化粧品や消費財メーカーでアップデートを行う事例が増えてきています。

バイアスを生み出すものの1つに、「価値観」があります。

2020年に公開された映画『STAND BY ME ドラえもん2』の新聞広告をめぐり、こんな議論が起こりました。広告の一部を抜粋します。

「野比しずか」がSNSで否定される理由

〝運動音痴で、意思薄弱なあなただけど 私はあなたのその優しさが大好きです。だから、逃げないで戻ってきて。大丈夫。私はあなたとなら、間違いなく世界で一番しあわせになれるから。 野比しずか〟

ここには、結婚直前に自信を失い逃げ出したのび太くんへ、しずかちゃんからの優しいメッセージが書かれていました。

しかしSNS上では、「野比しずかに泣けるとか言っている人、生理的に無理」「グロ……子どもに古い価値観植え付けんとって」といった書き込みが相次ぎました。

この一連の議論には、夫婦における「選択的夫婦別姓制度」の解釈の違いが関係しています。

そもそも選択的夫婦別姓制度とは、「夫婦別姓」にするか、「夫婦同姓」にするかを自由に選べる社会を目指すものです。その考え方を上書き保存して、社会として選択的夫婦別姓の議論を進めることと、表現の自由に基づいた夫婦同姓の「野比しずか」というアニメーションの表現をないまぜにした結果、このような議論が生まれたわけです。

ですが、ここに論理的な矛盾はありません。なぜなら、それぞれの価値観を尊重しあうのが、選択的夫婦別姓の考え方だからです。

夫婦の意思を尊重する。それこそが目指すべき多様性ではないでしょうか。個人によるさまざまな価値観を、自分自身の視点に上書きして考えるのではなく、別名で保存する。

そんな考えがバイアスと向き合う上では大切ではないでしょうか。

2021年に完結した『進撃の巨人』は、強大な力を持つ巨人を人類が駆逐していくストーリーでした。この大ヒット漫画からは、バイアスを取り払って視点を変える重要性を学ぶことができます。

前半では、巨人は人類にとっての絶対的な脅威として描かれています。主人公は母親を巨人に喰われ、巨人に対して強烈な敵意を抱きます。そして、死亡するリスクの高い兵団に入ることを志願し、「駆逐してやる!」という象徴的なセリフを吐きながら、勇敢にも巨人に立ち向かっていきます。

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