大幸薬品「クレベリン」の広告はなぜ問題なのか? 景品表示法戦略が的外れだった点が最大の誤算

拡大
縮小

クレベリンの問題の措置命令では、消費者庁はあっさりこう述べている。

「空間に浮遊するウイルス・菌を除去」との表示について、例えば、商品パッケージにおいて、「ご利用環境により成分の広がりは異なります。」「ウイルス・菌のすべてを除去できるものではありません。」等と表示しているが、当該表示は、一般消費者が前記表示から受ける本件商品の効果に関する認識を打ち消すものではない。

大幸薬品はどんな誤算をしたのか?

「空間に浮遊するウイルス・菌を除去」が強調表示で、「屋外では成分(二酸化塩素)が拡散されるため、屋内・室内でご使用ください。」が打消し表示。その下には、「※当社試験、閉鎖空間で二酸化塩素により特定の『浮遊ウイルス・浮遊菌』の除去を確認。」と書いてある。

そのため、「空間に浮遊するウイルス・菌を除去」といっても、それは密閉使用の話で、エビデンスもそうなっているということがわかる。

そうすると、訴求は「空間に浮遊するウイルス・菌を除去」に対し、エビデンスは閉鎖空間で、両者はマッチしないということになる。閉鎖空間のエビデンスがどんなにしっかりしたものであったとしても、「閉鎖空間の話であることは消費者に認識されていない」ということになってしまう。

『ヘルスケアビジネスのための実録 景品表示法』。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

そこが打消し表示でカバーされているかというと、打消し表示は「強調表示の直下に書く」のが大原則。この例では強調表示はパッケージの表、打消し表示は裏にあり、記述されている空間も異なるので、これでは打消し表示はないもの(無効)と扱われる。

これでは大幸薬品社に勝ち目はない。

消費者庁にあらがったのは無駄だったのかもしれない。それどころか、ゴールデンウィーク中の5月3日にホームページに載せたことや、インデックスでグーグル検索に拾われないようにしたことがネット上で騒がれ、悪評を広める結果となった。このマイナスは大きい。

しっかりした景表法戦略を持っていれば、こんな顛末にはならなかっただろうと思う。

恐るべし景表法、なのである。

林田 学 薬事法ドットコム社主、弁護士出身の実業家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

はやしだ まなぶ / Manabu Hayashida

東大法大学院卒。弁護士出身の実業家。平成14年度薬事法改正のための委員会委員。法律分析とマーケティングノウハウを組み合わせた唯一無二の方法論・リーガルマーケティングを駆使し、やずや年商470億、RIZAP75倍拡大、PCR検査キット年間280億売上、メビウス様創業者100億イグジットなど、数々の成功事例をプロデュース。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT