心理的ストレスが帯状疱疹の危険因子となる可能性は、2021年のデンマークの研究で指摘されている(British Journal of Dermatology)。同国民7万7310人が参加した大規模追跡調査(2010年)のデータを解析したところ、強い心理的ストレスと帯状疱疹のリスク上昇との関連性が示された。
研究では、心理的ストレスによって交感神経が高ぶり、ストレスホルモンが過剰に分泌されることから、細胞性免疫の機能低下をもたらす可能性があるとしている。
コロナ禍で、学生や社会人も自宅学習・自宅勤務を余儀なくされ、家庭内の環境にゆとりがなくなったり、ひきこもりがちになったりした人は多い。外出や会食など人との交流はばかられ、ストレス発散が難しくなった。帯状疱疹は心のSOSの表れでもあるのだ。
ところで、「帯状疱疹が急増」と聞かされても、経験がなければピンと来ないのではないだろうか。
ある日ふと胸やお腹、背中など、主に胴体の皮膚の数センチ四方が、チクチクと痛み出す。始めはなんとなく痛痒い、違和感がある、という程度の人もいれば、いきなりビリっと痛みが走って悲鳴を上げる人もいる。
患部を見ると赤くなっていて、「毛虫にやられたのかな」「何かに擦れてかぶれたのか」「じんましんかな」などと思いがちだ。だが、ポツンポツンと小さな水ぶくれも出来、数日経っても痛みも赤みもなかなか消えない。
そんな感じで受診する人が多いが、実際、診断を告げられるまでそれとわからない患者さんのほうが多いくらいだ。
「耐えられないほどの激痛」という人も少なくない
痛みには個人差があるが、「耐えられないほどの激痛」という人も少なくない。通常、病変は体の左右どちらかのみに出て、全身に広がるものではない。それでも顔面神経で発症すれば顔面麻痺を、耳近くの聴神経にかかれば難聴をひき起こすこともある。
皮膚の症状が収まるのには、たいてい2~3週間ほどかかる。痛みがあるので放っておく人はあまりいないと思うが、早めに受診して飲み薬を1週間くらい服用し、重症化を防ぐことが大事だ。
重症化すると1日3回の点滴治療をしなければならない。ウイルスが脳まで広がり、髄膜炎や脳炎を起こすこともある。
やっかいなのが、50代以上の患者さんの2割が陥る「帯状疱疹後神経痛」だ。神経へのダメージが大きいと、見た目には治ったようでも痛みだけ長引いてしまう。治療をしても3カ月以上、時に半年以上も苦しむことになる。
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