渋澤 それって、日本人は預金を金庫代わりと勘違いしていることですね。銀行で金庫を借りるのであれば、手数料を支払わなければならない。でも、預金は銀行から金利という「手数料」を銀行からもらう訳ですから。まぁ、今では、その手数料は、ゼロですが(笑)。
長期金利の低下は、本当によいことなのか
藤野 マイナス金利ということは、預金をすると逆に利息を取られるということですよね。銀行の貸金庫を利用すると手数料が取られるから、マイナス金利になれば文字通り、銀行預金は貸金庫代わりになります。まあ、日本人にはそれでも預金をする人は大勢いるでしょうね。でも、長期金利が0.2%を割り込むというのは、一時的な現象にせよ、マーケット的には物凄くエポックメイキングな話だと思います。
渋澤 国債を買うから利回りが低下する。ということを考えると、日本人は、政府に対しては口を極めて批判するくせに、政府の債務である国債は盲目的に信用していることになります。不思議だ。
藤野 それは、人よりもシステムを信用しているということでしょう。日本は多額の財政赤字を抱えているけれども、一方に世界一の対外純資産がある。1654兆円の個人金融資産もある。こうしたものに支えられている限り、日本国債の信認が失われることはない、というように、日本国債を取り巻くシステムに対する盲目的な信用が、日本国債の買いを支えていると思います。
中野 問題は、今の長期金利の低下が、私たちにとって本当にメリットなのかどうかということです。
藤野 すでに住宅ローン金利が下がっているので、今、住宅ブームが起きていますよね。相続税対策ということもありますし、「金持ち父さん」の真似ごとでマンションなどを購入し、貸し出す人も増えてきました。
それを皆が猛烈な勢いでやっているため、最近は賃料自体が下がりつつあります。かつ貸出に回る住宅が増えても、借りる人の数は増えないから、住宅の賃貸価格は今がピークで、今後、10年、20年かけて下落していく恐れがあります。
賃貸価格が下がるということは、投資収益的に考えると住宅本体の価格も下がることになるので、将来的には物すごい逆ザヤになる恐れがあります。「金持ち父さん」になれると思って住宅ローンを組み、家を買い、それを賃貸に回すことで得られる収益を住宅ローンの返済に充てていく、というロジックは、いずれ破綻するでしょう。
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