藤野 何よりもインフレに強い資産を持つことでしょうね。「おカネ持ち」というと、多くの人は不動産や株式などをたくさん持っている資産家を思い浮かべると思うのですが、資産家とおカネ持ちは全く別物です。
「おカネ=キャッシュ」と考えると、単なるおカネ持ちというのは、資産家になれません。特に、インフレ税が重くなりつつある時代において、おカネを持っているだけの人は、むしろおカネの価値がどんどん目減りしていきますから、貧しくなります。まあ、これは想像に過ぎないのだけれども、ソフトバンクの孫正義社長は、自身が保有していらっしゃる資産のうち、現金は1%もないと思いますよ。大半はソフトバンクの株式でしょう。
現金資産を持っていると、どんどん貧しくなる
渋澤 確かに、安倍政権の政策を経済学的合理性の視点で見れば、「現金資産を持たないように」ということですね。このメッセージを、もっと明確に伝えることが大事だと思います。
達成できるかどうかは別として、政府・日銀は2%のインフレ目標を達成するために量的緩和を積極的に行っています。こうした動きを見れば、現金以外の資産にシフトさせるのが得策であることはわかるのですが、それでもまだ個人金融資産の52.6%が現預金なんですよね。
藤野 そうですね。確定拠出年金の制度改善が行われ、NISAもこれから職域やジュニアなど対象が拡大し、年間の枠も100万円から120万円に増やされ、さらに非課税期間の恒久化も議論されています。インフレ税に対抗するために行動する場というのは、かなり整備されてきました。でも、実際に蓋を開けてみると、NISA口座は開いたものの、その口座を通じて投資をしている人というのは、驚くほど少ないのが現状です。
中野 このまま何も行動をせずにいると、国民の生活はどんどん貧しくなります。昨年4月に消費税率が引き上げられ、今年1月には相続税も幅広く取られるようになりました。

これに加えてインフレ税ですから、国民の富がどんどん政府に移転してしまいます。昔は社会保障などを充実させることで、多くの国民を幸せにできましたが、今の政府にそこまでの財力は残されていません。だからこそ、政府は国民1人ひとりが行動しやすい環境を整えているわけです。そのメッセージをしっかり受け止める必要があるでしょう。
渋澤 それでもメッセージの意味に気付かない人がいるので、政府は「これからインフレ税が重くなる恐れがあるので、現預金は自分の資産価値を維持できない可能性があります」といった、ディスクレーマー表示をきちっとする必要があります(笑)。まあ、これは冗談ですが。
でも、長いこと預金を貸金庫代わりにして、かつ資産形成まで行ってきた日本人に、いきなり預金から投資に切り替えろといっても、なかなか自分自身の問題として置き換えられていないでしょうから、もっと明確に、分かりやすくメッセージを伝える必要がありますね。われわれ、草食投資隊を含めて。
中野 長期金利の0.2%割れには、まさにそういうメッセージが強く込められていると考えた方が良さそうですね。
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