6日間の北海道旅で感じた、鉄道移動の意外な魅力 JR北海道12000円乗り放題パスが地味にすごい

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温泉から戻ったら、宿を管理している20代前半の男性、宗谷本線の秘境駅を乗り降りしているというご夫婦と卓を囲むことになった。

問寒別の1つ北に糠南という秘境駅があり、物置が駅舎になっているその駅に惚れぬいた男性が2015年、「糠南クリパ」という一人イベントを敢行。その後に少しずつ人数が増え、いまでは幌延町を巻き込むイベントにいたった話など、「鉄分の濃い」話で深夜まで盛り上がった。

筆者はいわゆる鉄道ファンではないが、彼らの熱い話は楽しめた。宿というよりも、地方に若くして移住したお兄さんの家に居候するというのが実感に近い。

改めて鉄道旅の魅力

昼間から酒が飲めることも、酒飲みとしては鉄道旅の大きな魅力である。

余市では、レンタカー旅では寄れなかった駅前にあるニッカウヰスキーの余市蒸溜所へ。ここのウリは予約制の見学ツアーに申し込んだ人だけがアクセスできるニッカミュージアムの有料試飲。余市シングルカスク10年(2009-2019)は15mlで1000円。700mlのネットオークション落札価格が約15万円ということを考えると15mlで3000円は下らないので非常に格安といえる。

斜里岳(筆者撮影)

運転とは無関係に落ち着いて車窓を楽しめることも鉄道旅の利点として挙げたい。根室本線では、JR北海道のイメージカラーの若草色にもなっている新緑の美しさはもちろんのこと、線路沿いの湿原には水芭蕉が咲きみだれていた。釧網本線では、釧路湿原や雪を抱いた斜里岳、それにオホーツク海が堪能できた。

レンタカーでは宿に着くと1日分の運転の疲れがどっと出てしまうものだったが、鉄道旅ではそんなこととも無縁だった。

北海道鉄道旅に制約が多いのは事実だ。北海道周遊といえばレンタカーで回る人が多いのが現実だ。筆者もこれまでレンタカーばかり利用してきた。

だが、やり方によっては、レンタカーでの旅では見つけられない北海道の魅力にふれられることを今回知った。「HOKKAIDO LOVE!6日間周遊パス」の発売期間延長が発表された。今年の夏、北海道格安鉄道旅を楽しんでみてはいかがだろうか。

橋賀 秀紀 トラベルジャーナリスト

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はしが・ひでき / Hideki Hashiga

東京都出身の40代。早稲田大学卒業。「3日休めれば海外」というルールを定め、ほぼ月1回の頻度で海外旅行に出かける。訪問国は121カ国。著書に『エアライン戦争』(宝島社)など。『週刊東洋経済』で「サラリーマン弾丸紀行」を連載した。Yahoo!ニュース 公式コメンテーター。記事の内容についてのお問い合わせ・取材の依頼などについてはこちらまで。

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