「多置換ベンゼン合成」、英ネイチャー誌に 名大大学院理学研究科の伊丹教授らが成功

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ベンゼン類の合成には、2010年にノーベル賞を受賞した鈴木章・北海道大名誉教授らが確立した「鈴木-宮浦カップリング」などの手法がある。伊丹教授らはさらに独自の「C—Hカップリング」という手法を2009年に開発、今回は最後に付加環化反応という手法も用い、一連の合成スキームを完成させたのだ。

「ベンゼンから始めていたときは置換基がぜんぜん入らず、途方に暮れていた。3年ほど前からチオフェンに注目し、各段階で最適の触媒を1年ほどかけて見つけ、まさに10年がかりの成功となった」と、伊丹教授は胸をなでおろす。

医薬品、材料開発への応用に期待

多置換ベンゼンでは、水素原子をすべてベンゼンのような芳香族置換基に置き換えたヘキサアリールベンゼン(HAB)が実用化されている。六角形からさらに六角形が突き出している構造だが、六角形はすべて同一種類のものでしか結合させられていなかった。

今回、伊丹教授の開発した方法なら、現在の有機化学で用いられる50種類ほどの置換基から、13億通り以上の多置換ベンゼンの組み合わせが理論上は考えられる。その可能性は無限に近い。伊丹教授は今回、特許などは取らず、研究成果をオープンにして応用を促したいという。

この分野で研究する大阪大学大学院工学研究科の三浦雅博教授(有機化学)は「これまで、伊丹教授らの独自の手法で4つまでは異なる置換ができていたが、さらに既知の手法を巧みに組み合わせて6つまでできたということだろう。困難と思われていたことができたという意味で、素晴らしい成果だ。応用面での評価はこの手法がどれだけ利用されるかにかかっている。今後の医薬品や材料開発に注目したい」と話す。

伊丹教授は京都大学出身だが、2005年から名古屋大学に在籍。下村脩・名大特別教授、野依良治・理研理事長らノーベル賞を綿々と輩出する名大理学部系の流れを汲み、期待される若手研究者の1人だ。

「日本の有機化学をリードする名大なので、簡単な研究では許されないと思って努力している。今後も目標を高く持ちたい」と話している。

関口 威人 ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

せきぐち たけと / Taketo Sekiguchi

中日新聞記者を経て2008年からフリー。名古屋を拠点に地方の目線で環境、防災、科学技術などの諸問題を追い掛けるジャーナリスト。1973年横浜市生まれ、早稲田大学大学院理工学研究科修了。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事