くっきり体に残る「傷痕」を治す最新ケアの超知識 帝王切開や手術でできた傷に悩む人は多い

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同院の近くにはがん治療を専門に行う病院があり、そこから来る患者さんもいる。乳がんの手術や乳房再建でできた傷痕を目立たなくしてほしいとの希望も少なくないそうだ。

そもそも「傷痕」はどうやってできるか

多くの人は、傷や傷痕は皮膚にできるものだから傷痕の治療は皮膚科で行うものだと思っているかもしれない。だが、実はそうではなく、形成外科が得意とする分野だ。

村松さんは、「傷痕は、ケガややけどなどの傷のあとに生じる正常な生体反応」だという。

傷ができると血液成分の血小板が集まって固まり、出血を止める。その後、傷口からは透明な浸出液(しんしゅつえき)が出てくる。これには血管や皮膚の細胞の増殖をうながす細胞成長因子が含まれていて、傷を塞ぐのに大きな役割を果たす。

「この細胞成長因子がしっかり働けばきれいな傷痕ができますが、この働きが阻害されれば目立つ傷痕になってしまうのです」(村松さん)

細胞成長因子の働きを阻害するファクターとして挙げられるのが、禁煙や過度の飲酒、ステロイド薬や抗凝固薬などの薬、糖尿病や高血圧、動脈硬化、貧血などの病気、感染、加齢などだ。このほか体質なども関係してくるが、大人よりも子どものほうが傷の治りが早く、傷痕が残りにくいのは、やはりこうしたファクターが少ないためだ。

皮膚に限らないが、細胞は乾燥に弱い。乾燥させてしまうと傷口の細胞組織にダメージが生じるので、治りが遅くなり、また目立つ傷痕も残りやすい。消毒も同様に傷口の組織を殺してしまうため、昨今ではあまりすすめられていない。さらに、皮膚にうるおいがあったほうが痛みも出にくいそうだ。

その上で、傷ができたときの対処法について、村松さんは次のようにアドバイスする。

「大事なのは傷口を流水でしっかり洗うこと。石けんを使う場合はよく泡立てて、やさしく洗い、しっかり流水ですすぎます。その後は清潔なタオルで水分を吸収させて、最後にハイドロコロイドという被覆材で傷口を覆います。ハイドロコロイドは1日~数日に1回、貼り替えます」

このやり方は実際に医療現場でも行われていて、「湿潤療法(モイストヒーリング、潤い療法)」などと呼ばれている。

ハイドロコロイドは透明で厚みのある弾力のある素材。「キズパワーパッド」や「ケアリーヴ」などの製品として市販されているほか、シート状になっていて自分で好きな大きさに切って使えるタイプも売られている。

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