愛知「豊橋」にブラックサンダーコラボが多いワケ 1日3万個を売り上げる名物になった「あん巻き」

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豊橋市内にある有楽製菓の豊橋夢工場(写真:有楽製菓)

しかし、本来コラボというのは、双方に利益があるwin-winの関係が基本だろう。大手のコンビニやファストフードチェーンなどとのコラボと違い、地方都市にある菓子店とのそれは有楽製菓にとって何のメリットがあるのか。豊橋市内にある有楽製菓の豊橋夢工場に隣接する直営店を訪ねた。

地元企業とのコラボは河合会長の豊橋愛の賜物

「地元企業の皆様とのコラボは、弊社会長のあふれんばかりの豊橋愛からはじまりました」と話すのは、有楽製菓マーケティング部部長の杉田晶洋さんだ。

実は、豊橋は創業者の河合志亮氏の出身地。菓子屋を始めるために東京へ行き、成功を収めたのである。志亮氏の息子である会長は、東京よりも豊橋への思いが強く、1985年頃に豊橋へ引っ越してきたという。

「弊社と豊橋との縁は、1979年に市東部の大岩町に工場を開設したところからはじまりました。会長には長年にわたってお世話になっている豊橋の皆様にご恩返ししたいという気持ちがあると思います。2013年にブラックサンダーのデザインにラッピングした路面電車、ブラックサンダー号も会長の発案でした。地元企業様とのコラボもブラックサンダーで地元豊橋が盛り上がればとの思いがあり、ご恩返しの一環として取り組ませていただいております」(杉田さん)

お亀堂の森社長がブラックサンダーとのコラボを河合会長に直談判したほぼ同時期に前出のボンとらやからもコラボのオファーがあり、それぞれ同時に進められたという。しかし、当然のことながら豊橋の会社や店であれば何でもOKというわけではない。コラボである以上、お互いのブランド価値を高め合う関係でなければならないのだ。

また、有楽製菓には、通常の企業間コラボの契約内容とは異なる“地元コラボ枠”があるという。条件を満たせば商品に使用するブラックサンダーの仕入れ代金のみでロイヤルティー等は不要というから地元企業にとってはメリットが大きい。今でも数多くコラボのオファーがあるそうだが、商品化まで至るのは10分の1くらいとか。

有楽製菓マーケティング部部長、杉田晶洋さん(筆者撮影)

「コラボ商品でブラックサンダーを原料として使用する際に、取り組み先様がフードミキサーで粉々にして使用されるケースがよくあるのですが、これではブラックサンダーの食感が台無しです。ザクザクとした食感がなければブラックサンダーである意味がありませんから。その点、あん巻きやピレーネなどは工夫していただき、それぞれの個性をうまく発揮できていると思います。私も東京の本社へ行くときのお土産に買っています」(杉田さん)

ブラックサンダーあん巻きなどのコラボ商品は、原則東三河エリア以外では購入することができない。それも契約の中に条件として盛り込まれている。地元企業とのコラボは、豊橋の人々に喜んでもらい、ひいては東三河エリアを盛り上げるのが目的だからだ。

有楽製菓の直営店の駐車場には、豊橋ナンバー以外の車も見かけた。週末になると、岐阜や三重など県外から訪れる客も多いという。

「豊橋の皆様に喜んでいただきたい」という河合会長の豊橋愛によって、ブラックサンダーを豊橋観光のキラーコンテンツにまで成長したのである。豊橋夢工場のことを自慢気に語る豊橋在住の友人の気持ちが少しだけわかった。

永谷 正樹 フードライター、フォトグラファー

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ながや まさき / Masaki Nagaya

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。

地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに記事と写真を提供。

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