日本に有事が起こったら一般市民は避難できるか 現状の法的な枠組みは自然災害対策と大差がない

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新藤氏:以前、私は自民党国防部会長のときに「非戦闘員の退避計画を作れ」と指示した。これ、通常の国にはあるが、日本にはない。それを自衛隊法にどう位置づけるか。当初の「安全が確保されたときに輸送する」から、「必要に応じて日本人を避難させる」というふうに法律の解釈を直した。だが、やはり根っこの議論をしないと、現実問題として(対応)できない。

後藤氏:国民保護法制は当時の民主党も賛成して作ったので、法律的にはもう用意されている。その法律に基づいて国民保護計画を県が作り、市町村が作る。与那国の計画も読んだが、最後の(島外避難の)船はどうなっているのか、そこは「わからない」となっている。法律はある、計画はある、だけど実態はまったくできないというのが現実で、この問題は法律が足りないということではない。

国民を保護し救うのは国の役目

橋下氏:ここはいつも日本の政治行政の欠点だ。知床の観光船事故もそうだが、さまざまな対策があるのにきちんとそれを実行あらしめる仕組みができていない。国民保護法の計画はできたとしても、ロシア・ウクライナ戦争を見れば、避難させる際に実力組織を持った部隊が周りにいないと避難はできない。あとは民間にお願いしますなどできない。飛行機も150名乗りなどではなく、それこそ定員300名、400名の輸送機で2~4回ほどで全員避難させるなど、ぜひこの議論をやっていただきたい。ウクライナ東部地域も、ようやく非戦闘員を戦地から避難させることができるようになり、今、東部地域でウクライナが反撃に出ている。戦地から非戦闘員を退避させないと戦闘はできない。ここは、新藤さん、計画ができているからいいではないか、ではなく、ぜひ新しい部隊づくりを含めて、実力組織をもって本気で国民を守る、逃がすという観点で、反撃能力だけではない国防を議論し、実行してもらいたい。

新藤氏:それはそのとおり。

松山キャスター:先の大戦では新藤さんの祖父、栗林忠道陸軍中将(のち陸軍大将)が硫黄島の戦いで、アメリカ軍上陸前に住民約1,000人を疎開させた。

(画像:FNNプライムオンライン)

新藤氏:現実に国民を保護し、救わなければいけないのは国の役目だ。これは待ったなしでやらなければいけない。しかし、それを確実にやらせるためには、普段の訓練や態勢が必要で、それは強制力を持ったものでない限り、結局は要請にとどまり、最後は地元に委ねますといってなかなか踏み込めないのが現実。今はまず差し迫った計画を作ることが優先だ。しかし、合わせて、それが効果的に動くための前提として国が責務として確実にやるという法的な担保をつけなければ、行政組織はきちんと動かない。ウクライナは憲法に基づいて緊急事態を布告し、戒厳の命において移動制限や国民保護をやっている。橋下さんと同じように私も沖縄戦に心を痛めている。硫黄島は(島民を)強制疎開させた。当時、その権限があったからだ。そのことは沖縄でもできたが、日本軍はやりきれなかった。当時、実はアメリカ軍側も(島民退避を)考えていた。アメリカも軍内部で一般市民を分けようということはあったが、アメリカはやらなかった。戦争中、日本とアメリカともに結局非戦闘員の退避をやりきれなかった。権限はあったのにやりきれなかった。これが戦争の現実だ。(有事では)とにかく結論だけ早く出せというふうになるのだが、結論を出させるためには法治国家である限りきちんとした準備がなければ実効性は出ない。これは極めて重要だ。

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