また、債券市場の暴落も続く。金利上昇はもちろん国債の価格を下落させるが、最も価格が下落するのはハイイールド債という低格付けの「ジャンク債」市場である。これらはもともと国債の利回りが低すぎたから多くの投資家が買っていただけで、アメリカ債利回りが3%になるなら、極端にいえば不必要になり、買う人はいなくなる。
したがって、債券保有者は投げ売ると一段と暴落してしまうから売るに売れず、「発行体が破綻しなければ元本は戻ってくるから」と塩漬けにしがちだ。
こういう場合、破綻は突然起こる。例えば、債券市場の根本にあるアメリカの10年債の利回りが2%から4%に上がると、リスクプレミアムは、ベースである国債の上昇率を大きく上回って急激に拡大する。そうすると、ジャンク債の利回りは、7%をあっという間に超える。債券で利回りが7%を超えればほとんど買い手はつかないから、売ることはほぼできなくなる。
破綻の連鎖がリスク資産市場全体に広がる恐怖
ここで、実体経済が悪化すると、収益が減って返済できない発行体がまず出てくる。次に、収益が減らずとも、ジャンク債の新発市場で買う投資家がいなくなり、借換え債を発行できなくなる主体が多数出てくる。デフォルト(債務不履行)だ。デフォルトが出てくると、これらの債券を投げ売りできずに抱えていたファンドが損失を計上する。
すると、こうしたファンドへの出資者は資金を引き揚げるしかない。よって、好景気時には高いパフォーマンスを誇っていたジャンク債ファンドは、あっという間に破綻に追いこまれる。
ジャンク債市場は投資家も限られているので、破綻は連鎖する。ジャンク債を買っていたファンド側も、借り換えができなくなった発行体も破綻する。負のスパイラルである。この破綻の連鎖は、リスク資産市場全体に広がる。
かつては、株が暴落すれば、資金が「安全資産」である債券の市場に逃げ込んだものだ。今は連想ゲームだけで、実際のカネは動かない。株と債券の投資家は別主体であるだけでなく、行動原理も違うからである。
セクターローテーションをするような投資家は、要はモメンタム投資家(勢いのあるほうにつく)で、次々と新しいモメンタム(要はバブル)に乗っていって、転々としているだけだから、バブルの崩壊が始まれば、次々とすべての市場から撤退して、バブル崩壊を加速させる。
この場合、さらに悪いことに、損失を取り返すために、新しく「買う」のではなく、「新しいモメンタム」、つまり「売り」に乗るので、すべての市場で売り仕掛けが加速する。これが、リスク資産市場全体の暴落スパイラルである。
一連の流れの中では、ゴールド(金)の価格も下がるだろう。最後の拠り所は資源かもしれないだが、価格が上昇すれば実体経済にさらにダメージとなるため、資源市場も暴落する。このように、リスク資産市場全体でレバレッジが急低下し、売りが売りを呼び、暴落はオーバーシュートとなるのである。
そして、今度はリーマンショック後と異なり、量的緩和でこれを救済することはできない。この仕組みを使い切ったうえに、資産縮小を世界中の多くの中央銀行が行っているからである。これが、これから起こることである。
(本編はここで終了です。次ページは、競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)
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