上記のように、アメリカの多くの株が暴落したが、そもそもこれまでの上昇が金融緩和バブルによるものだったから、金融緩和が終われば上昇も終わる。金融市場だけでなく、実体経済を見ても状況は最悪だ。インフレは衰えを見せず、約40年ぶりの水準で、スタグフレーションになるのは必至だろう。
また、ロシアによるウクライナ戦争は日を追うごとに長期化の見通しが強まっており、どちらが優勢だろうが、世界景気にはマイナスで、インフレの長期化にはプラスに働くばかり。つまり最悪だ。
ウクライナを中心とする戦争難民の数も、これまでとは次元が違う。欧州経済は長期にわたって、この先の見通しは暗いままだ。
一方、中国のコロナ禍の再燃で世界の物流は混乱しており、これもインフレ継続要因だ。今後、中国の需要が回復しても、世界を救うまでには至らない。中国の習近平政権の手腕にも、ゼロコロナ政策をはじめ、疑問が噴出してきた。中国さえ将来は不透明だ。
つまり、世界中、プラスの見通しはどこにもない。そもそも、新型コロナウイルスが世界中に蔓延し始めた約2年半前に金融緩和バブルは崩壊しかけていた(「2020年、意外なところからバブル崩壊は始まる」参照)。
その後、コロナ対応などの名目で、アメリカを中心に世界の主要国が金融・財政政策を「限界以上に」やったことで、バブルは最後の大膨張をしていただけだ。だから、バブルがはじければリスク資産が暴落するだけでなく、実体経済も先送りしてきた損失を現実に受け入れることになる。株式市場の現状は最悪、見通しも最悪、実体経済も最悪だ。
「バブルの逃げ場」もなくなった
そして、この最悪状態は長期化必至だ。もはや世界中どこでもそうだから、逃げ場がない。金融市場での逃げ場を失ったマネーが、代替資産の市場に逃げ込めるかというと、それも難しい。すでにそれらの一部は「絶賛崩壊中」だ。例を挙げよう。
①いうまでもなく、暗号資産の代表であるビットコインは暴落している。昨年11月には6万7000ドル台をつけていたが、一時は3万ドルを割れた。一時的に戻っているが、再度暴落するだろう。
ほかの暗号資産などはさらに悲惨で、マイナーなものは崩壊状態だ。今回の暴落の1つのきっかけは、「ステーブルコイン」と呼ばれる、ドルとの交換を保証している(と称していた)ものが、暴落したことがある。
理由はもちろんドルの裏付けを十分に持たずに、バブルを作っていたからであり、破綻回避のために保有するビットコインを大量に売ったことで、ビットコインの暴落が加速した。今後も、バブル崩壊スパイラルが何重にも起こるだろう。暴落スパイラル、暴落の伝染、投資家の恐怖の伝染は、バブル崩壊時のいちばんの特徴である。
②メタバース、NFT(非代替性トークン)バブル。そもそもビットコインの価値とブロックチェーン技術とは別問題であり、目新しいもので資産バブルを作ろうとするのは、典型的なバブル末期の症状だ。
通貨になるためには、値動きがほとんどないことが必要で、為替相場が動くのは基本的にマイナスであり(だからユーロが生まれた)、ただの投機用資産であることは明白だ。メタバースをゲームの中で遊びとして利用したり、NFTを使用したりすることは、あくまで技術の利用法である。それらを取引資産とした時点で別物、バブルである。
③絵画の世界でもバブル崩壊の兆候が現れた。例えば現代アートは、アートの中でも「オークションでついた価格がその作品の価値を決める」という倒錯した市場である。ここで5月9日、現代アートとして最も有名な画家の1人であるアンディ・ウォーホル作の「マリリン・モンロー」が売りに出て、1億9500万ドル(約250億円)で落札された。
これはアメリカ絵画、および現代アートの史上最高額を大きく更新した(これまでは2017年に前澤友作氏が落札したバスキアの作品で1億1000万ドル)。この「事件」を指してメディアは、絵画マーケット、現代アートマーケットは株式市場の混乱を尻目に好調だという解説をしているが、これはまったくの間違いだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら