「すぐキレる子」の脳にスマホが与えた深刻な影響 ジョブスが子どもをデジタルから遠ざけた真相

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そこで私は、保護者やグループホームのスタッフに、子どもたちにゲームを一切させないようにアドバイスするようになった。

「なぜ不利な状況にある子たちの楽しみを奪うようなことをするんです?」と、私のアドバイスはしばしば抵抗を受けたが、この介入に従ってもらうと、多くの深刻な症状が急速に軽減された。興味深いのは、子どもたちがすぐにゲームのことをたずねなくなり、自然と健康的な活動に目を向けるようになったことだ。

ゲームに敏感な反応を示すのは、チックやトゥレット症候群の子どもも同様だった。このような子どもたちは、脳の過活動領域が、本人の意思とは無関係に異常な運動を引き起こしていた。

ゲームが引き起こす「戦うか逃げるか」反応

精神に問題を抱える子どもにとっては、ゲームをすることで脳と身体を過剰に働かせ、神経症状や精神的な症状を悪化させているようだった。最初はゲームを中心に観察していたが、時間が経つにつれ、「戦うか逃げるか」反応が、ノートパソコンやスマホなど他のスクリーン機器でも起こることがわかってきた。最終的には、これらの影響が重度の精神障害を持つ子どもたちだけでなく、ADHDの症状を持つ子どもたちにも見られることがわかった。

そして、診断を受けていない「健康に発達している(定型発達の)子ども」であっても、それほど極端ではないにせよ、重篤な症状が出る可能性があると気がついたのだ。――つまり、感受性の高い子どもや精神疾患を持つ子どもだけではなく、どんな子どもにも悪影響を与える可能性があるということだ。

ここに重要な関係があると確信した私は、ゲームの制限をより広く、より厳密に行うようになった。すると、驚くべき結果が得られた。本当にゲームに「依存」している子どもは少数派かもしれないが、大多数の子どもたちは、ゲームをするとアンフェタミン(覚醒剤の一種)にさらされたときとよく似た症状が現れ、それは完全にゲームをやめても、数日から数週間しないと消失しないのだ。

私は、「デジタルデトックス」と呼ぶことにした介入の前後に起こったことを観察した。成績や宿題の達成度などの客観的な指標を追跡し、そして親がやむなくスクリーンを「再導入」したときに何が起こるかを見守った。デジタルデトックスをする価値があることを親に納得してもらうためには何が必要か、やり方についてどのような不安があるか、私の伝え方がどのような効果をもたらすのかに注視した。そして気づいたのは、スクリーンを見なければ見ないほど、子どもたちの成長が飛躍的に伸びることだった。

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