「円満退職」「好きなことをして生きる」という幻想 辞めるのにいい人に思われようとするな

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

しかし、マジメな人ほど会社にとっての円満にこだわり、会社に言わせれば「無責任な奴」が早々にヤバい会社を退職して、次の人生を開始している中、タイタニックの船長のように「私が逃げるわけにはいかぬ」と会社と心中してしまうのだ。

おそらく「自分が辞めてしまったらみんな困る」と思って辞められないのだろうが、それはむしろ自意識過剰である。

リアル大黒柱として会社を物理的に支えていたなら別だが、一人社員が抜けて会社がつぶれることはほとんどない。確かに、一時期は大変かもしれないが、すぐに平常運転に戻る。

それに、タイタニックの船長が残ったのは船の責任者だからである。会社の責任者でもないのに責任を負おうとするのはすでに慈善事業であり、仕事ですらなくなってしまっている。

円満でもバックれでも、後の人生に影響はない

そもそも、退職する時点で大なり件なり会社や残る人間には負担をかけているのだ。そんな退職をすると言っておいて円満にしたいというのは、殴った後でハンカチを差し出す程度のことでしかなく、たとえ殴ったあとに唾を吐こうがキスをしようが、殴ったことには変わりはない。

また、残った人に悪く言われたくないから円満に退職したいと思っているかもしれないが、正直それは不可能である。結婚や出産という非の打ちどころのない円満理由で退職したものでさえ、陰で「この忙しい時にヤってるなよ」という陰口を何度も聞いたことがある。

しかし何せ退職しているため、その陰口が自分の耳に届くことはない。届くとしたら、辞めた会社にわざわざ聞きにいくマゾヒズム行為をした時だけだ。

そしてたとえバックれ同然で辞めて、残った者の恨みを買っていたとしても、後の人生で恨みを晴らされたということはないし、正直辞めた会社の人間と再会することすらまれである。

次ページ「ないもの」を追いかけても仕方ない
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事