小中学生の「野球肘検診」実施が重要視される背景 全国各地で実施も、ほとんどがボランティア

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しかし医師や理学療法士は、交通費などの経費は出るが基本的にボランティアだ。医療スタッフを統括する神戸大学医学部附属病院整形外科学分野助教で、オリックス・バファローズのチームドクターでもある美舩泰氏はこう話す。

医師の美舩泰氏(筆者撮影)

「現実問題として費用の問題はあるんですけど、無料で実施しているのは一人でも多くの人に気軽に受診してもらいたいからです。

がん検診などと違って罹患率も低いですし、みなさんもそこまで危機意識がないので、ハードルを下げないと受診しないのではないかと思います。

検診でOCDが見つかる子はほとんどが軽症で、ノースローなど保存的治療で治る子です。対照的に異状を感じて病院を受診する子の半分くらいは手術をしなければならないほどです。重症度が全く違うんですね。

野球肘検診の最大の目的は、無症状や軽症のうちにOCDなどの障がいを発見して、悪化しないうちに治癒することです。最近は保存的治療の方法も進化しているのでその意義はますます高まっています」

野球肘検診は医師から見ても必要なこと

病院に来て治療をする患者は治療費を支払う。しかし野球肘検診は無料だ。この点についてはどう思うのか?

「確かにそうですが、患者が悪化することを喜ぶ医者はいません。手術でメスを入れても治すことはできますが、それでも一定の確率で合併症などが残ってしまいます。

それに野球肘検診に参加して、私自身の経験値も高まりました。医者の能力は経験値なので、多くの患者を診れば診断能力は上がります。その意味では有益なトレーニングだと思うので、若手の医者を連れて参加しています。

この会を永続的に続けるためにもどんどん若手医師を参加させたいですし、病院を転勤するなどで参加できない医師がでても、代わりの医師が参加できるように仕組みづくりをしようと思っています。

私はプロの投手も診断しますが、ドラフトでとったのはいいけどメディカルチェックで肘の損傷が見つかる投手も中にはいます。そういう投手も小さいころに故障が見つかればそうはならなかった可能性もあるでしょう。まだ、そんな状態でもプロまで行けたのは幸せで、途中でリタイアしている人がたくさんいると思います。そういう悲劇をなくすためにも野球肘検診は必要だと思います」

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