国際文化会館とAPI「合併」で目指す新境地の展望 船橋API理事長、近藤・国際文化会館理事長に聞く
船橋:もちろん、合併の目的はそれだけではありません。近藤さんもご指摘の通り、米中のデカップリング、体制間競争といった「分断の国際政治」が生まれつつある中で、世界の中での日本の立ち位置を見直すことが求められる今、国際文化会館が担ってこられた「開かれた知的対話」と「国際交流」の戦略的意義がこれまで以上に高まっています。APIとしても、政策研究の延長上にそうした活動を探求すべきだという思いもありました。
目指すところは、クラブ機能とメディア機能を併せ持つ知の拠点です。政策研究に終わらず、顔の見える人間同士の対話と交流を重視し、政府との非公式の意見交換や世界に影響力のある人々との対話を通じて、国際秩序とルールの構築、国際世論形成などに参画することのできる拠点にしていきたいと考えています。
お互いの相性は抜群
――合併には相性があると思います。かたや創設70年の老舗国際交流団体、こなたは設立10年でスタートアップのシンクタンクですから、かなりの歳の差婚です。しかも異業種合併です。その点はどのようにお考えになったのでしょう。
船橋:合併を話し合う最初の会合のときに、「like-minded」という言葉が出て、参加者一同がうなずき合うという場面がありました。like-mindedは主義主張や思想信条を同じくすると言う意味ではありません。一緒にコミュニティーをつくっていくときに、あの人となら一緒にやりたい、ともに働くのにふさわしいという仲間の感覚だと思います。
どちらも、民間、独立であることを大切にし、政府からの補助金も天下りもない。互いにグローバルな知的対話を重視してきたし、その中で存在感を発揮し、その困難もやりがいもわかっている。そして、それぞれが誇りと自負を持ちながら、同時に、現状に満足せず、より高い志を追求しているという文化が似通っている。それが、知的対話、政策研究、文化交流を一緒に進めていこうと決意した理由です。相性が抜群ということだと思います。
近藤:私も「like-minded」に大きくうなずいた1人です。どちらも、民間、独立、グローバル、多様性を大切にしていますが、これは必ずしも日本の組織では典型的なあり方ではありません。民間の自負、独立の気概と基本的価値観で驚くほど一致していました。
会館は設立当初こそ政策研究を重視してきましたが、ベトナム戦争終結後あたりからアジアが安定成長期に入ったこともあり、国際交流に活動の重点が移りました。しかし、先ほど申し上げた通り、世界の情勢が不安定化した今、原点回帰の必要性を実感していたときに、APIこそ相性抜群のパートナーだと思いました。
会館にとってもAPIにとっても重要なのは知の尊重です。そこが互いに最も共鳴したところだったとも思います。