日本の事業会社:11年の見通し--格付けの安定化は続くが、改善の速度は不透明/その1・概要《ムーディーズの業界分析》

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●2011年の主要なクレジット上の論点

以下の各要因は、11年に日本企業が直面するであろう主要な課題であり、格付けの安定化への速度を規定するものである。
1. 需要拡大の鈍化
 10年の企業の業績改善は、国内外の需要の拡大によるものであった。しかしながら、国内成長の回復は、大部分が政府による景気刺激策、たとえばテレビやエアコンなどの省エネ家電やエコカーへの補助金に支えられたものであった。これらの制度は、10年のうちに終了もしくは縮小されたため、内需は鈍化し、そのため特に国内に特化している発行体の業績改善が失速した。

日本はまた、より密接に中国を中核とするアジア地域経済とかかわるようになった。したがって輸出需要は日本企業にとって重要な成長ドライバーとなっている。アジア、特に中国の消費財や資本財の需要は、日本企業の業績回復の速度を決定することになるであろう。

アジア地域経済の成長の鈍化と、各国の金利上昇や貸し出し鈍化といった金融の引き締めは、日本企業の成長にネガティブな影響をもたらす可能性がある。これは特に、自動車、家電、機械製造業などの輸出企業に該当することである。

2. 円高下でも競争力と利益率を維持するために、コスト構造改革の成功が重要に
 円高は、特に韓国や台湾の製造業との競争を一層困難にするため、日本の輸出企業にとって引き続き重要な懸念となるであろう。一方で、円高は原材料単価上昇のインパクトを軽減するという効果もある。

円高や原材料上昇による業績や収益への影響度合いは、個々の企業の売り上げやコストの構造における為替のミックスによって異なる。為替変動のインパクトは、日本の主要上場会社の営業利益に対して、対ドルでの1円の変動につき、平均して約1.0%の増減をもたらす。影響がほとんどない業種もあれば、2%を優に超える業種もあるが、自動車メーカーは最も影響を受ける業種の1つである。

昨年の収益改善は、大規模なコスト削減による部分がある。格付け水準に織り込まれている財務改善の期待を維持し、実現していくためには、プロダクトミックスの強化や生産プロセスのさらなる統合、経費合理化といった、より一層のコスト競争力の改善が重要である。

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