看護の日に考える「あえて人に触れる病院」の真意 愛媛県今治市・美須賀病院「て・あーて」の挑戦

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足の先から膝にかけて、なでるようなマッサージでむくみがひいていく。患者の肌に触れる「て・あーて」で看護師も癒される(写真:筆者撮影)

病室で「て・あーて」を受けていた60代の女性は自宅で転んで骨折し、他の病院で手術を行い数か月の入院を経て、美須賀病院に転院した。入院時には右足のむくみが酷かったが、看護師からマッサージを受けるうち、むくみがなくなっていった。

看護師がその女性の足にオイルを塗り、足を包み込むようにして、なでるようにマッサージを15分続ける。その間、患者は「いつ退院できるのかなぁ。また車を運転できるようになるかなぁ。乗れるようになったら車で通院したいんです」と、胸の内を語っていた。患者の気持ちや家族の状況が分かることで、治療やリハビリに役立つ側面がある。

他の病室では、脳の疾患で入院した女性の患者が「て・あーて」を受けながら気持ちよさそうに眠っていた。足元に目を向けると、足首のラインがみえないほどパンパンにむくんでいる。

膨れ上がった手足の腫れが引き、皮膚にしわが戻る

患者の皮膚は弱っていることが多く、「て・あーて」のマッサージは一般的なマッサージとは少し異なる。看護師は「ふわっと羽でなでるような感覚でマッサージをしていきます」と、足の指から膝にかけてそっとマッサージを続けた。

同病院では、「て・あーて」によって、これまで何人もの患者の手足のむくみが改善している。パンパンに膨れ上がった手足の腫れがひいて、皮膚にしわが戻った状態を見るのは看護師にとって嬉しい瞬間。思わず「見て!見て!」と声が出て、スタッフが患者の周りに集まって共に喜ぶという。

オイルマッサージのほか、「て・あーて」の代表的なケアに「熱布バックケア」というものがある。患者を腹臥位(ふくがい。顔は自然に横を向いた状態でうつ伏せになること)にして、温かくしたタオルを背中に当てる。腹臥位にすることで肺が拡張して自然に痰が出やすくなり、チューブでの吸引をしなくて済むようになる。温タオルで身体が温まることで血液の循環が良くなり、免疫力が向上する。

別の病室では、看護師2人が明るい声で「背中を温めましょうね」と高齢の男性患者に声をかけ、「熱布バックケア」の準備を始めた。患者の身体の向きを腹臥位に変え、看護師が温かいタオルを背中に乗せると、「ああ~、ああ~」と、気持ちよさそうな声が出た。保温のために温タオルをビニールで覆い、15分ほど背中を温める。

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