日本人がよく知らないロシア人の意外な「食生活」 前回のウクライナ危機で食品の質が劇的に向上

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さらにモスクワやサンクトペテルブルクにはオーガニック食材だけを扱うレストランとかビーガン向けレストランも増えており、健康志向の市民の人気を集めています。

手頃な価格のフィットネスクラブも普及しており、2018年に北方領土に行ってみた際には国後島にまで公営のスポーツジムが設けられていました。25メートルプールを備えた本格的なもので、サハリンからインストラクターを招くという力の入れようです。

もともとロシア人はスポーツ好きなので、食生活の変化と併せて健康志向はこれからも続いていくのでしょう。

実はまだ本気出してないだけ?

ロシアの食生活について、最後に付言しておきたいのは、国産食料品の品質が著しく向上していることです。従来、ロシアの肉や野菜は品質がイマイチと見做されており、実際に肉なんかは血抜きが十分でないのか、買って調理してみると「なんか臭い……」ということが多々ありました。

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こうした状況を変えたのが、2014年のウクライナ危機です。アメリカとEUがロシアに対して発動した経済制裁への報復としてEUからの農産品に対する禁輸措置が発動され、西側から食料が入って来なくなったのです。

ソ連時代なら「我慢して国産品を食え」となったのでしょうが、舌の肥えた今のロシア人に対してはこうはいきません。こうなると俄然、ロシアの農産業はやる気を出して、高品質な国産の野菜や肉が流通するようになりました。ワインやチーズも相当高品質なものが作られるようになり、「やればできるじゃん」と思ったものです。

このように、「実はまだ本気出してないだけ」という分野がロシアにはまだ結構ありそうな気がします。

小泉 悠 東京大学先端科学技術研究センター専任講師

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こいずみ ゆう / Yu Koizumi

1982年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。修士(政治学)。外務省国際情報統括官組織(専門分析員)、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所客員研究員、国立国会図書館立法及び考査局非常勤調査員などを経て、現在、東京大学先端科学技術研究センター特任助教。『「帝国」ロシアの地政学―「勢力圏」で読むユーラシア戦略』(東京堂出版)で、2019年サントリー学芸賞受賞。他の著書に『プーチンの国家戦略』(東京堂出版)、『軍事大国ロシア』(作品社)などがある。

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