ホンダが仕掛ける電池戦略の「必然」と「死角」 ホンダOBが明かす、電池開発「30年の歴史」

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GMとの協業においてポイントとなるのが、電池を含めた共通プラットフォーム「アルティウム」を活用することだ。これにより、個社で開発するよりもコスト低減の可能性を追求している。

アルティウムの心臓部にあたるLIBには、GMが長くアライアンスを組んできた韓国LGエナジーがつながっている。つまり、2024年にホンダがアメリカで発売する予定のEVには、必然的にLG製のLIBが組み込まれることになる。

焦点は国内向けの電池戦略

今後、焦点となってくるのが国内市場向けの電池の調達だ。

ホンダは2024年に軽自動車、特に軽商用車のEVを発売する計画だが、このEVにはエンビジョンAESCジャパンのLIBを搭載することにした。AESCはもともと、2007年に日産自動車とNECの合弁会社として設立された。が、2019年には日産から切り離され、中国のエンビジョングループの傘下に入った。

エンビジョングループの傘下に入ったことで、潤沢な資金を元手にLIBの生産キャパを一気に拡大する計画だ。2024年には茨城の中央工業団地で新しい生産ラインを稼働させ、英国とフランスでの投資も同時進行する。さらに、アメリカで生産拠点を設けることも明らかにしている。

国内EV事業をホンダが推進するにあたって、投資力のあるエンビジョングループAESCジャパンを選択することには相対的に合理性がある。2019年をもって日産の直接の傘下ではなくなっているので、色がついていないうえ、投資力とスピード感を期待できるからだ。

こうして、ホンダはEV向けの電池戦略を整えつつある。

2030年までにEV200万台分の電池を確保することは可能なのか、という疑問もあるだろう。ただ、ホンダのように自動車各社が目標数値を明確にすることで、電池業界の投資を促す力学は働く。それによって新たな投資で供給能力を拡大できるという、電池個社にとっては大きなチャンスでもある。

問題はむしろ、韓国や中国の電池各社の投資力とスピード感に対して日系勢が相対的に劣勢であることだ。ここをどのように打開していくのか、日本の電池産業界に課せられた喫緊の課題である。

佐藤 登 名古屋大学客員教授・エスペック上席顧問

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さとう のぼる / Noboru Sato

1978年横浜国立大学大学院工学研究科電気化学専攻修士課程修了後、本田技研工業に入社。1989年までは自動車車体の腐食防食技術の開発に従事。社内研究成果により1988年には東京大学で工学博士号を取得。1990年に本田技術研究所の基礎研究部門へ異動。電気自動車用の電池研究開発部門を築く。1999年から4年連続「世界人名事典」に掲載される。栃木研究所のチーフエンジニアであった2004年に、韓国サムスングループのサムスンSDI常務に就任。2012年12月にサムスン退社。2013年から現職。イリソ電子工業社外取締役。

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