ホンダが仕掛ける電池戦略の「必然」と「死角」 ホンダOBが明かす、電池開発「30年の歴史」
しかし、国内各社からホンダが電池を調達するうえでは、それぞれに障壁がある。
まずパナソニックの電池事業は、テスラ向けの円筒型電池を除けば、2020年にトヨタ主導(51%)で設立された合弁会社、プライム プラネット エナジー&ソリューションズ(PPES)になっている。円筒型LIBは適用しないホンダにとって、競合メーカー傘下のPPESから電池を調達するのは好ましくない。
東芝はSCiBという電池を持っているが、この電池は作動電位が2.5ボルトと低く、本格的なEVには搭載しにくい。BECで合弁を組むGSユアサが出資する、リチウムエナジージャパンはどうか。ホンダ向けに電池を供給してもらうためには、GSユアサが大規模な投資に踏み切るか、ホンダが出資することで生産キャパを拡大する必要がある。また、三菱自動車の資本が入っているうえに日産とアライアンスを組んでいるため、サプライチェーンを築きにくい。
現地調達が前提に
そもそも日本で作った電池を海外に輸出することも現実的ではない。地産地消が前提となり、EVの展開地域ごとに戦略を考える必要がある。とくに焦点となるのが、EV事業をホンダが直接展開している中国とアメリカの2大市場だ。
中国市場の場合、PPESが大連で事業を展開しているが、HEV用に集中していることと、前述のようにトヨタの傘下にあるため選択肢からは外れる。となると、候補に挙がってくるのは韓国勢か地場・中国系のメーカーだ。政治的な優位性を考慮すると、中国系を採用したほうが圧倒的に有利になる。
そこで頼った相手が、中国の電池メーカー、寧徳時代新能源科技(CATL)だ。2020年には中国CATLに600億円(1%)を出資し、中国国内で市販されるEVには同社のLIBを採用することにした。中国市場でローカルの電池メーカーのLIBを適用することは、中国政府との連携やロビー活動を推進する上で利点があるとの判断であり、トヨタ自動車や日産自動車も同様の戦略を取っている。
アメリカはどうか。アメリカにはパナソニックが進出しているが、テスラ向けの円筒形LIBだ。一方で、アメリカでは投資力とスピード感に長けた韓国の電池メーカーが圧倒的に優勢だ。そこで有力な調達先として浮上したのがLGエナジーソリューションだ。
ホンダはGMと2013年から燃料電池車の共同開発をしており、4月の電動化戦略説明会ではその提携をさらに強化すると発表している。GMとのEV事業の協業においても、同様に共同開発をしながら推進している。
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