東上線ときわ台、南宇都宮と「駅舎そっくり」の謎 大谷石と三角屋根、東武「理由はわからない」

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一方、駅舎の大きな特徴である大谷石の壁は、大半を新たに造り直した。開業時のまま残っているのは、改札を入ってホームへの地下道に続く連絡通路部分の壁面と柱だ。ほかは自動改札導入のタイミングなどに新たな石を張っていたため、オリジナルを重視する今回のリニューアルでは撤去した。開業時から残る大谷石の壁面は、複雑な凹凸の幾何学模様が特徴だ。「1枚の板にこんな複雑な模様を施しているんです。昔の職人さんのすごさを感じます」と、塚越さんは感嘆する。

ときわ台駅に残る開業当時からの大谷石の壁(記者撮影)

徹底したこだわりで開業時の姿を再現した駅舎だが、「復元」でないのには理由がある。駅前から見て左側の妻面は壁が撤去されていたため新たに造り直したが、現在の耐震基準を満たすには形状を変えざるをえない。そこで、あえて「再現」と表現しているという。

この壁や装飾などを再現するにあたって、写真のほかに参考にしたのが比較的原型をとどめていた南宇都宮駅だ。三角屋根や破風板の波模様、大谷石の壁といった特徴は両駅に共通しており、塚越さんは「基本的な形そのものは一緒」と話す。

よく似ているが意外に違う

南宇都宮駅の開業は1932年で、ときわ台駅の3年前。なぜ類似したデザインとなったのかは、「実はわれわれもわかっていないというのが正直なところ」と塚越さんはいう。「確かに外観もそっくりなんですが、なぜその意匠をときわ台に持ってきたかは不明なんです」。どちらも設計者は「東武鉄道」としかわからないという。

東武宇都宮線の南宇都宮駅はときわ台駅とよく似ている(記者撮影)

その南宇都宮駅は、宇都宮線の終点である東武宇都宮の1つ手前に位置する1日平均利用者数920人(2020年度)の小駅だ。同駅は1932年、当時駅の南側にあった野球場の最寄り駅「野球場前」として開業。翌年に南宇都宮に改称している。

三角屋根と大谷石の壁はときわ台駅とよく似ているが、実際には屋根の瓦や壁面のデザインは別物だ。瓦は緑色で、「フランス瓦」と呼ばれるフラットなタイプ。大谷石張りの壁も、ギザギザ模様の腰のラインより上は縦に並べて張った「縦張り」、下は「横張り」で、幾何学模様ではない。東武社内では両駅を「兄弟駅」や「姉妹駅」とは言わないという。

同駅も2020年、開業時の姿を保存・再現してリニューアルした。「南宇都宮駅は開業当時のままほぼ手つかずで残っている部分が多く、基本的にはそれを保存するという考えでした」と、リニューアルを担当した施設部建築土木課主任の須長拓也さんは話す。

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