「わずかな報酬」「生還保証なし」で成功の求人広告 非日常性を与えて「ひらめき」を生む戦略質問

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話は本題のほうに移った。そして「この南極がさ、今、ないんだよ」とため息をつかれた。南極がないのは、はたしてその経営者自身にとってなのか、それとも社員にとってなのか。聞いてみたところ「両方だよ」と答えた。

脳に非日常を与える戦略質問

「自分はいつでも仕事が楽しかった。そして会社も大きくなり、昔とは比較にならないほど、高学歴の人材も採用できるようになった」。その言葉から、その方は南極ではなくても「至難の旅」からの生還を繰り返してきたという実感をもっていて、今、社員にとってのそれがないことを寂しく思われていることがわかった。

自分の新しい南極も重要だが、今は、自分の会社に入社した若い人たちにとっての「南極」を考えなければならない、と、ふと言われた。そこから、かなり深刻でタフな議論が始まったが、数十分後には、自社のビジョンの再定義、組織戦略、人材戦略のあり方など、おおまかなカタチができてしまった。

人材戦略にかかわらず、戦略やビジネスモデルを発想するためのスタートが「ひらめき」であるのはいうまでもない。そのために、いかに相手の脳に非日常を与えるかが重要だと思う。それを実現するための有力な方法の1つが、問いかけを磨くことだと考えている。

そうした問いかけを筆者は「戦略質問」と呼んでいる。

金巻 龍一 GX代表取締役、元日本IBM常務執行役員

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かねまき りゅういち / Ryuichi Kanemaki

アクセンチュア、PwCコンサルティング、IBM戦略コンサルティンググループなどにおいて、20年超にわたり戦略コンサルティング業務に従事。専門は、新規事業開発、B2B営業改革、グローバル戦略、ポストマージャーインテグレーション(PMI)。2002年のIBMによるPwCコンサルティング買収の際、PwCコンサルティング側統合リーダーを務め、当事者として経営統合を体験。その後、10年間にわたり「戦略コンサルティンググループ」を統括。2013年IBM卒業後、内田洋行の特別顧問就任。2014年GCA参画。「戦略・PMIサービス」事業の立ち上げに従事。2018年GCA退職後、新規事業開発の専門会社としてGXを設立し、現職。

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