デジタル化「進まぬ日本」「成功する台湾」決定的差 上から強制するのではなく「選択肢」を与える

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タン:まず共通ルールとして「コミュニティーの規範」があり、情報源の資料はすべて、審査を経て投稿されます。

『オードリー・タンが語るデジタル民主主義』(NHK出版新書)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

個人の政治的意見や感情的な書き込みは、初めからCofactsのチェック対象にならないので、「荒らし」が入り込む余地はありません。ここで市民ができることは、より多くのピースで、パズルを埋めていくことだけなのです。

そういったリスク対策はすべて、場をどう作るかという話だと思いますね。

例えば個人攻撃が簡単にできる設定にしてしまえば、当然その空間は二極化して有害になるでしょう。でも、もし設計した空間が、情報を提供するだけの場だったら、誰かをフォローしたり、スレッド型の会話に返信したりする手段がないので、荒らしに乗っ取られることはほとんどなくなります。

Cofactsの成功のカギは「民主的に改良」

堤:どんな場になるかは、そこに参加する人の質ではなく、最初に設定する人の意図によって、いくらでも調整が可能だということですね。それはとても勇気づけられるお話です。

今日本では、「政府やWHOの方針と違うことを書くとすぐ陰謀論と決めつけられて叩かれるから、意見を書けなくなった」という声をあちこちで聞くのですが、これもユーザー側が発想を変えれば解決の道が開けますね。デジタル技術を使って、誹謗中傷を心配せずに自由に意見交換できる場を設計し、どんどん仮想空間に作り出せばいい。

アメリカでも去年ビッグテックが共和党員の掲示板を凍結して以来、どんどん新しい言論空間が作られて、たくさんの人々がそっちに移動しています。そして今のお話を聞いていて、仮想空間で言論の自由を守るために不可欠な要素が、使う側である市民の「主体性」であることに、改めて気づかされました。

Cofactsの成功のカギは、ウィキペディアの良い部分をうまく使って、民主的に改良したことなのですね?

タン:そのとおりです。大枠はウィキペディアをモデルにし、メインはファクトチェックにフォーカスさせるよう設計したからこそ、うまくいったのです。

(翻訳協力:前田真砂子/株式会社トランネット)

(第2回『台湾に好例「GAFAに独占されぬネット空間」作る術』に続く)

堤 未果 国際ジャーナリスト

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つつみ みか / Mika Tsutsumi

ニューヨーク州立大学国際関係論学科卒業、ニューヨーク市立大学大学院国際関係論学科卒業。国連、アムネスティインターナショナルNY支局員、米国野村証券を経て現職。日米を行き来しながら取材、講演、メディア出演を続ける。著書に「報道が教えてくれないアメリカ弱者革命」「ルポ・貧困大国アメリカ」(3部作)「沈みゆく大国アメリカ」(2部作)「政府はもう嘘をつけない」(2部作)「アメリカから〈自由〉が消える」「核大国ニッポン」など多数

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オードリー・タン 元台湾デジタル担当政務委員

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Audrey Tang

元台湾デジタル担当政務委員(閣僚)。台湾初のデジタル大臣、台湾の無任所大使である。1981年、台湾台北市生まれ。幼少時から独学でプログラミングを学習。14歳で中学校を自主退学、プログラマーとしてスタートアップ企業数社を設立。19歳のとき、シリコンバレーでソフトウエア会社を起業する。2005年、プログラミング言語Perl6開発への貢献で世界から注目を浴びる。トランスジェンダーであることを公表。2014年、米アップルでデジタル顧問に就任、Siriなどの人工知能プロジェクトに加わる。その後、ビジネスの世界から引退。蔡英文政権において、35歳の史上最年少で行政院(内閣)に入閣、デジタル政務委員に登用され、部門を超えて行政や政治のデジタル化を主導する役割を担った。2019年、アメリカの外交専門誌『フォーリン・ポリシー』のグローバル思想家100人に選出。台湾の新型コロナウイルス対応では、マスク在庫管理システムを構築、感染拡大防止に大きく寄与した。

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