寺島実郎氏、「仏テロでEU瓦解リスクも」

浮かび上がった欧州の深刻な問題

一方、EUのもう一つのエンジンであるフランスは今まで持ちこたえてきていたが、今回の事件のダメージが大きい。それを考えると、EUはまさに統合の危機を迎えている。グローバルなリスクで言えば、今年は欧州が最大のテーマになるのではないか。

イラクでの失敗で、米国に打つ手なし

──12日にパリで行われた反テロのデモには各国の首脳が参加した一方、米国のオバマ大統領や政府高官の姿はありませんでした。これには米国内にも批判の声があります。米国の対応をどう見ていますか。

米国は現在、複雑骨折しているような状態で、イスラム過激派の迷走に対して率先して対抗するリーダーシップを見せられる状況にない。イスラムの台頭と、米国の中東におけるプレゼンスの低下は相関している。1979年のホメイニ革命以降、段階を経て徐々に力を失っており、イラク戦争の失敗がとどめを刺した。

てらしま・じつろう●1973年早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、三井物産入社。2006年三井物産常務執行役員。2009年から多摩大学学長、三井物産戦略研究所会長。2010年から日本総合研究所理事長。(撮影:梅谷秀司)

一方、中東で今起きているのはイランおよびシーア派イスラムの台頭で、ペルシャ湾の北側をほぼ席巻している。これに対するスンニ派の焦燥感から生まれたのがイスラム国だ。

米国にとって皮肉なのは、イスラム国を潰そうとするとそれで笑うのはシリア、イラク、イランにまたがる“シーア派の三日月”と呼ばれる諸国だということ。

他方、米国の実体経済は回復している。シェール革命などが背景にあるが、2014年12月の失業率は5.6%にまで改善した。米国民からすると、外に出てリスクを取る必要がないので、ますます内向きになっているわけだ。

米国がフランスと連携したとしても、見えない敵と戦いながら悶々として消耗させられるだけだ。イスラム国を潰せばテロがなくなるわけでもなく、そこから出た不満分子が自国に戻ってテロを起こす。根底から「イスラムとの対話」を考えるべき時だ。

「週刊東洋経済」2015年1月24日号<19日発売>「核心リポート04」を転載)

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