寺島実郎氏、「仏テロでEU瓦解リスクも」

浮かび上がった欧州の深刻な問題

こうした中、アルジェリア移民の子孫などは、誰もが貧困にあえいでいるということではなくても、教育や就職のチャンスなどで、フランス社会の中である種のギャップを感じている。鬱々とした空気が蔓延している。

一方、世界では今、イスラムの台頭、あるいは逆襲が始まっている。イスラム教徒はこれまで第1次世界大戦後のオスマン帝国解体時に、英国やフランスが人為的に中東に引いた国境線に閉じ込められてきた。1970年代に英国が後退してからは、米国がペルシャ湾の警察官として中東を仕切ろうとしてきた。

この100年間、大国は中東で短期的な利害優先で思慮に欠けたマネジメントを行い、その結果が、「イスラム国」やアルカイダといったテロ組織を生み出してきた。テロなど暴力でもって主張を訴えるやり方には、断固たる拒否を示していかなければならないが、一方で、そうしたものを生み出している構図に対する理解も必要だ。

16~17世紀にオスマン帝国はウィーンを包囲した。欧州、キリスト教は2度も瓦解寸前まで追い詰められており、イスラムに対する欧州のトラウマは強い。一方、イスラムの人たちはこの100年間、欧州大国の横暴の下に壟断(ろうだん)されてきたという、屈辱感と怨念を抱いている。

EUは統合の危機を迎えている

こうした中、「イスラム復興の時代が来た」と言わんばかりに跋扈(ばっこ)するイスラム国のような組織に、イスラムのみならず、世界中の屈折した若者が行き場のない憤りや孤独感、閉塞感を抱えて集まってきている。

世界的なベストセラーになった、『21世紀の資本』で格差拡大を指摘したトマ・ピケティ氏がフランス人だということと、今回の事件がフランスで起きたということには、どこかで関連がある。

──今回の連続テロは、欧州もしくは欧州連合(EU)の秩序に、どのような影響を与えるでしょうか。

今回の件と、ギリシャがEUを脱退するかもしれないという話は、並行している。これまではドイツを中心に欧州みんなでやっていこうとギリシャを囲い込んできたが、ここへ来てドイツは「ギリシャの離脱もやむなし」と言い始めている。そうなればギリシャが欧州の孤児になることは間違いない。

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