気になったのは、これらの要件に「ただし、これはあくまで原則であり、あらゆる状況を聞き取ったうえで保健所が総合的に判断します」としっかり書き添えられていることだ。
一瞬すごくマトモに聞こえるが、先のとおり、現実には保健所の窓口担当者に「総合的な判断」など期待できない。彼らは自分たちがそこまでの役割を担うことを想定していないからだ。
そもそも例外的な対応をしないのがお役所仕事というものだ。そんなことは百も承知で無意味な但書をつけ、責任を保健所に押し付けている厚労省にも、ほとほとあきれてしまった。
知人はというと、「一度陽性になると90日間は免疫があるのでかからない、という認識だったのに……」と、ただ困惑していた。
知人の認識は正しい。アメリカ疾病対策センター(CDC)は、新型コロナの初回感染から90日以内の人については再検査の必要がないとしている。この期間内に再感染の起こらないことを、これまでのエビデンスが示唆しているという。
英国公衆衛生サービス(PHE)の調査では、免疫が5カ月持続する可能性も示されている。抗体陽性だった対象者6614人のうち44人が、2020年6~11月の間に再感染とみなされた。初回感染によって再感染を免れる率は83%、再感染までの日数の中央値は160日以上だった。
日々、感染症の診療に当たる身としても、これらの数字はしっくりくる。インフルエンザなら経験的におわかりいただけると思うが、例えば一度インフルA香港型にかかれば、同シーズン内に再びA香港型にかかることはない。
免疫システムが初回感染時に倒した外敵を記憶しておき、武器となる「抗体」の産生体制を整えておくためだ。次回からは細胞への感染が広がる前に、入って来るや否や撃退することができる。
「BA.1」の回復者は「BA.2」にかかる?
さて、現在の流行の主流は、3月に急拡大したオミクロン株の「BA.2」系統だ。今では都内感染者の7割超とされ、5月には9割超と見込まれている。今年2月時点では、首都圏の新型コロナの主流はオミクロン株「BA.1」系統だった。
つまり知人はオミクロン株BA.1系統、その娘さんはBA.1もしくはBA.2系統に感染した可能性が高い。
となれば「BA.1でできた免疫が、BA.2に通用するの?」という疑問も出てこよう。
インフルエンザでも、運悪く「A型から回復した同シーズン内にB型にもかかってしまった」なんていう人がたまにいる。
だがこれについても、大きな心配は要らないだろう。
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