「普通」を知るためにツイッターの乱読が有用な訳 性別や世代を超えて考えてみることが大事

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もう1つ、自分をアップデートするために日常的にトライしているのは、性別や世代を超えていろいろな人の立場に立って考えてみることです。

1日の5%ほどは、「他の人の頭」で考えているのではないかと思いますし、マーケットとも「対話」しているつもりです。そうやって考えたことは、Facebookに投稿することもあります。

書くことで思考がより整理される

例えば、政治のことなら「今の状況は岸田さんの目にはどう見えているのか、どう考えてどんな手を打つだろう」「菅さんだったら?」「高市さんだったら?」などと考えて文章に書いてみたりもします。考えるだけではなく、書いてみることで思考がより整理されるからです。

もちろん、どんなに「○○さんだったら」と考え抜いたところで、相手の心の中に入ることはできません。それでも自分の立場から離れて客観的に情勢を分析し、「この状態で○○さんだったらどうするか」と思考を巡らせることは、新たな気づきをもたらしてくれます。

資産運用会社の経営者という立場では、「野村證券だったらここでどう動くだろう」「大和証券だったら?」「三菱UFJ銀行だったら?」などと考え、商品戦略を考えたりもするわけです。「自分の立場を離れ、他者の立場に立って考える」ことは、先を読むための習慣の1つになっています。

「先の先」を読む精度を上げるために、他者の視点を取り入れる必要があります。他者の視点を想像することは、自分自身の偏りの修正につながるからです。

ものの見方が偏っていれば、自分の尺度に合わない世の中の動きや企業の変化を正確に捉えることはできません。ですから「先の先」を読むにはフラットであることが望ましいのです。そのためには、できるだけ偏りなく情報を得ることが必要です。

情報というものは、自分をアップデートする努力をサボれば当たり前に偏りが生じるものでもあります。ところが、「努力しなければ情報が偏ってしまう」ということに気づいてさえいない人は少なくありません。

おそらく多くの人が「自分は普通だ」と思っているのではないかと思いますが、「自分は普通」と感じているときは注意が必要です。たいていの場合、「普通だと思っていることは普通ではない」からです。

例えば、メディアでは住宅ローンについて取り上げるときに「3000万円のローンを組んでマイホームを買う」といった設定が多く見られます。この3000万円という価格は、都心に住んでいる人にとっては普通かもしれません。

しかしほんの少し地方に足を伸ばせば、数百万円で買える広い庭付きの戸建て住宅がいくらでもあるわけです。日本全体でみれば、3000万円のローンを組んで家を買うのが普通ではまったくありません。

マイホームの話は1つの例にすぎず、都心では普通のことが地方に行くと特殊であることは多く、逆もまたしかりです。同様に、男性にとって普通のことが女性にとっては特殊であったり、高齢者にとって普通であることが若者にとって特殊であったりします。

「東京に住む20代の会社員男性」のように属性が似た人であっても、2人いれば、1人が「自分は普通」と思っていることがもう1人にとっては「普通ではない」ということだってありえるわけです。

自分をつねにアップデートしていくためには、「自分は特殊なのかもしれない」と考え、フラットにものを見られるよう、感覚を修正し続けることが欠かせません。そのような姿勢を持ち続けることができれば、「先の先」を読む土台となり、大きな失敗を減らしたり、成功する道筋を見つけたりすることにつながっていくのではないかと思っています。

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