狩猟・採集時代からの「脳のクセ」が左右--『ヒトはなぜ拍手をするのか』を書いた小林朋道氏(鳥取環境大学教授)に聞く


──振り込め詐欺にだまされるのも、「脳のクセ」の要素が大きいともあります。

五感を通して情報を脳内に取り込むとき、大まかに分けて二つの経路がある。一つは、その場の事態に素早く対応するために備わっている経路、これは対象を大まかに見ている。いま一つは、入ってきた情報を、大脳で、それまでの記憶などとも照合し、少し詳しく分析して判断する経路だ。

毒蛇らしきものを見たときに、特徴的なところを大まかに見て、危険性があったら、まず警戒する。そこで感情が大きく揺れる。逃げるかどうか。これに対して大脳は遅れて詳しく分析する。これはひもではないかとか、記憶が動員され、照合される。トータルでは、生存のためには両方あったほうが適応的だ。大まかな反応ばかりを繰り返すと、エネルギーが浪費されて生き残れなくなる。

振り込め詐欺の場合は、まず大まかな情報、往々にして家族などが窮地にあるという情報がまず入ってくる。感情が刺激され、暴走を始める。何とかしてやらないといけないという思いに押し切られる形で、二つ目の経路が機能しなくなる。本来は二つの経路で適応的になったはずが、そこに巧妙に付け入られて、相手にだまされてしまう。

──「脳のクセ」が人間比較行動学のポイントですか。

人間の「脳のクセ」は適応的で、狩猟・採集時代に当てはめてみると、なぜそうなのか見事にわかる。そのクセで現代社会を見たら、人間というものがまたよくわかる。

(聞き手:塚田紀史 撮影:今 祥雄 =週刊東洋経済2011年2月5日号)

こばやし・ともみち
1958年岡山県生まれ。岡山大学理学部生物学科卒、京都大学で理学博士号取得。専門は動物行動学、人間比較行動学。著書に『通勤電車の人間行動学』『人間の自然認知特性とコモンズの悲劇』『先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!』『先生、カエルが脱皮してその皮を食べています!』など。

『ヒトはなぜ拍手をするのか』 新潮選書 1050円 189ページ

  

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