私たちは対応できないのだろうか。
権利を侵害している商品が日本に入ってきたとき、それは日本の税関が止められる。輸入品を拘留、押収することができるからだ。また他国に自国権利を侵害した商品が流れないか監視は必要だろう。またロシア周辺国に自国権利を侵害した商品が流入しないように協力を仰ぐのも重要だ。
しかしロシアに友好的な国に流れたら? それを抑止するのは難しいかもしれない。もちろんWTO(世界貿易機関)などに訴えることになるのだろうが、途方もない道程が待ち受ける。はたしてどのようにロシア企業を引っ張り出して、国際機関に訴え、さらに実額を引き出せるだろうか。仮にロシアが次の政権に移った後に、新政権が過去の使用料にたいして遡及して支払うことを期待するのもロマンかもしれない。しかしそのロマンは、ロマンのままで終わる可能性が高い。
ロシアの経済はさほど大きくはない。中国の10分の1にすぎない。さらにウクライナ侵攻のあとに再進出しようと決めている西側諸国も少ないだろう。知的財産の侵害が続くのであれば、撤退したブランドがふたたびウクライナ侵攻以前の市場シェアを取るのは難しいのではないか。
風評リスクにぶち当たる可能性も
しかし、ロシア市場そのものを相手にするのは難しくても、各国企業は別の問題にぶち当たる。ロシア国内での市場を諦めたとしても、企業はこれからも風評リスクと対峙することになるからだ。つまり知的財産が守られない国から模倣品が生まれ、それが各国に流れ行くリスクだ。それによって自社商品のブランド価値が低下する恐るべきリスクだ。ロシア国内ではすでに相当数のブランド品の偽物が流通しているといわれる。それが増加する懸念が出てきた。
なお、国家が外資系企業を国有化するのは初めての例ではない。とはいえこの時代においてG20のメンバーだったロシアが国有化や、知的財産の対価を支払わない利用を許すのはいささか私たちの理解を超えている。
ウクライナへのロシアの侵攻は、戦争という残虐な事実を突きつけるとともに、グローバル化の反動をも私たちに突きつけている。
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