しかしその願いがかなわなければ、行政がその株式を取得できる。その後、政府そのものが企業を経営できるわけではない。そこで、市場等で株式を売却する仕組みだ。おそらくロシアあるいは他国の資本が引き継ぐことになるのだろう。
さらにロシアの「ありえない」傾向の他例を紹介する。100万歩を譲って、もしロシアの国有になったとしても、それまで企業が積み上げてきた叡智を使用するなら対価が必要だ。しかしロシアでは3月7日に、「特許権等の保有者が非友好国の場合」、その利用料は「収益の0%」と決議した。説明は不要だが、この非友好国には日本やアメリカ、EU諸国が該当する。
これは恐るべきことだ。つまりロシアは他国の発意を使い放題なのである。
もともとロシアには国家安全保障等の緊急時には、特許権者の同意なく使用を許可する権利があるとされた。ただし使用料は払われていた。それが次から、非友好国には0%支払いますと改定した格好だ。
この状況のなかで、商標権や著作権について、ロシアが非友好国に対価を払うと想像するのは難しい。はたして、払う気がないロシア側に請求をどのように行うのだろうか。もちろん付随して工業デザインも同様だ。
冒頭の丸亀製麺はマルと改名された。しかしほかのブランドはそのまま使用される可能性すらある。
ロシア市場のリスク
ロシア企業が非友好国のもつ特許にアクセスしてロシア経済の後押しや下支えをすることも可能だろう。もっとも、ロシアはそれらの知的財産を知るだけで、短期的には何もできないかもしれない。技術力も十分ではない。労働者のレベルもまだ不十分だ。たとえばロシアにある大手自動車メーカーの工場を外資からロシアが引き継いだからといって、すぐさま自動車を生産できないだろう。しかしそれはあくまで短期的なことであって、中長期的には知的財産にフリーアクセスできる被害が拡大する可能性は高い。
とくに著作権の侵害が広がるとすればどのように影響するだろうか。エンターテインメント作品がロシア国内に流布された場合を考えると甚大なものになる。
ちょっとこんな思考実験をしてみよう。著作権の支払いを拒否する国があったとして、この国が非友好国の楽曲を自国民に無料で配布する。そして自国内で圧倒的なシェアをもつサービスになるかもしれない。
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