バフェットを「真似して投資する人」に欠けた視点 「信念」が伴わなければ儲けることはできない

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まずバブル期に株の保有を減らすという点から見ていくと、そもそもバブル期というのは株を買わずにいられなくなる時期なのです。どんなに割高だと思っても、どんどん上がり続ける株価を見ると、焦りやら欲望やらがないまぜになって、株を買わずにいられない気持ちになります。だからこそバブルになるのです。

それに、バブル期に株を売ることはとても危険なことでもあります。勢いのついたバブルは簡単に収まらず、しばしば人が思うよりもはるかに長く、はるかに強く続いていくことが多いからです。

バフェット流・危機の乗り越え方

次に、大きく株価が下がったところで株を買うということについてですが、例えばリーマンショックのときがそうだったように、これも現実には非常にむずかしいことです。

2008年9月、アメリカ大手投資銀行のリーマン・ブラザーズが破綻すると、世界の金融市場は大混乱に陥り、株価は乱高下を繰り返しながら大きくその水準を切り下げていきました。

そんなさなか、世界の金融界の巨人であったモルガン・スタンレーやゴールドマン・サックスといった勝ち組金融機関にさえ危機が忍び寄ります。このとき、モルガン・スタンレーには日本の三菱UFJが、ゴールドマン・サックスにはバフェットがそれぞれ出資することによってなんとか危機は乗り越えられました。

両社とも、大きな損失を抱え込んでいたリーマンとは違って、損失が積み上がって資本を食い潰していたわけではなく、市場環境が平静を取り戻しさえすれば大きな利益を生み出せる力を持っていました。

したがって、三菱UFJもバフェットも、結果としてこの投資で大きな成功を収めることになるわけですが、一方でこの事例は、そんな勝ち組の両社にさえ、三菱UFJやバフェット以外にお金を出す投資家がいなかったという当時の厳しい状況を示してもいます。

みなが恐怖におののいているときに、自分だけが冷静に買い向かえるなどとは思わないほうがいいでしょう。たとえ、比較的財布に余裕があり、「試しに少し買ってみよう」と買ってみて、たまたまそれが後から見て絶好の買い場にあたっていたとしても、その後でほんの少し株価が上がったところで、おそらく猛烈に売りたくなってくるはずです。

「せっかく歴史的な安値水準で買えたんだから、少し上がったからといって株を売るなんてもってのほかだ。むしろもっともっと買って、少なくとも10年は持ち続けよう」などとは、普通は思えないでしょう。

ではなぜ、バフェットにはそれができるのでしょうか。バフェットには信念があります。この世の終わりがきたようなどんなにひどい状況になったとしても、必ずアメリカ経済は再び立ち上がるはずだ、という信念です。

この信念は、彼が投資家として活躍してきたこの70年近くのあいだ、ずっと報われてきました。破滅などめったに起きないし、万が一破滅が訪れるとしても、そのような事態を恐れていても仕方がないということかもしれません。いずれにしても、これは分析とか予測というよりも信念の問題です。

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