成城石井の上場計画がこれほどまで話題になる訳 単に「高級スーパー」と思っていたら本質を見誤る

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このセントラルキッチンが、成城石井で展開される惣菜やスイーツのほとんどすべてを作っている。外注ではなく、自社製造なのだ。しかも、惣菜開発の中心を担うのは、元有名ホテルや有名レストラン、有名スイーツ店のプロフェッショナルたち。

いってみれば、一流の料理人がスーパーの惣菜を作っているのである。ほとんどが手作りで準備され、パッケージされ、各地の店頭に並ぶのだ。

実はこれこそが成城石井の店舗エリアが限られている理由でもある。配送できないエリアでは、惣菜が展開できないのである。だが、逆に新たなセントラルキッチンができれば、店舗拡大のポテンシャルは大きいということになる。

大人気の本場ドイツの製法を今も守る自家製ソーセージや成城石井の看板商品ともいわれ、年間120万本以上売れるというプレミアムチーズケーキをはじめ、人気のスイーツもセントラルキッチンで作られている。

食品しかり惣菜しかり、置いてある商品がまったく違うのが、成城石井なのだ。しかも一流のものが揃っていながら、実はお手頃な値段設定になっている。だから、わかっている人は、こういうことになる。

「これだけいいものなら、この値段は決して高くない」

「高級スーパー」という呼び名が好ましくない理由

テレビなどでは高級スーパーと紹介されることも多い成城石井だが、実はこの言葉は好まない。なぜなら、高級スーパーを作ろうとしてきたわけではまったくないからだ。筆者は成城石井にまつわる書籍の制作にあたって、原昭彦社長にも取材を重ねたが、興味深い言葉を耳にしている。

「成城石井というお店は、成城のお客さまに育てていただいたんです」

成城石井のルーツは、1927年2月に誕生した果物、缶詰、菓子を行う食品店だった。創業の地は東京・世田谷区成城。後に、都内屈指の高級住宅地となる。

「時代の最先端を切り拓いてこられた経営者や文化人も多い。早くから海外を経験されている方もたくさんいらっしゃいました。そこで商売をするとは、どういうことか。世界でいいモノを見てこられた目の肥えた方々の視線に、常にさらされ続けたということです」

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