「アメリカの株価下落は長引かない」と言えるワケ 株価は決して金利だけで決まるものではない

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こうした経済成長を強調するような連銀高官の発言がずっと続いており、それも投資家の景気楽観論を支えてきた。だが、それに沿ったブレイナード発言にもかかわらず株価が成長株中心に反落したのは、やはり利食い売りにすぎないと解釈するわけだ。

こうした点から、株式市場の全体論でも物色面でも、先週のようなアメリカの株価の軟調な推移はそれほど長く続かないと見込む。

日本株は相変わらずの海外投資家頼みか

それにつけても、日本株の弱さが目立つ。前回コラムでも、すでに為替市場で始まったと懸念される「日本売り」が株式市場に広がるおそれを指摘した。

先週の世界の主要な株価指数の騰落率ランキング(為替換算は行っていない)を見ると、ワースト10(下落率上位10位)は、ハンガリーBUX、スリランカCSE、アメリカのナスダック総合、ポーランドWIG、オーストリアATX、ドイツDAX、日経平均、TOPIX(東証株価指数)、メキシコIPC、ブラジルボベスパ、といった具合だ。

ナスダックは述べてきたような金利上昇懸念を口実とした利食い売りによるもので、欧州市場の下落はウクライナ情勢が影を落としているのだろう。スリランカは同国の財政破綻懸念だ。そうした諸国と肩を並べて、日本株が不振だといえる。

日本株が冴えない展開である要因は、やはり国内投資家の層が薄く、また国内機関投資家は多くが横並びであり、「空気を読んで」大胆な売買を行わない傾向にあるということだろう。このため、海外投資家が買えば上がり、売れば下がる、という状況を、なかなか脱することができない。

先週は、アメリカを含む諸外国の株価調整から、とくに日本でさしたる悪材料がなくても海外投資家が日本株を売り、それが日本株を大きく押し下げたのだろう。

逆に世界株式の市場環境が好転し、強気の投資家が世界的に増えれば、日本でさしたる好材料がなくても海外投資家が日本株を買い、日本株の上昇率が他国を凌駕する局面が現れると予想している。

ただ、そうした日本株の優位は今年内の半年程度で終わり、残念ながら長くは続かないと懸念している。長期的には日本株が上昇率で他国株に劣後するという展望ではあるが、日本株の水準自体は長期上昇基調をたどるという見通しだ。

(当記事は会社四季報オンラインにも掲載しています)

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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