「アメリカの株価下落は長引かない」と言えるワケ 株価は決して金利だけで決まるものではない

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ウォラー、ブラード、パウエル各氏の発言の骨子と、ブレイナード理事の発言の大要は、同じようなものだとしか思えない。つまり、金融引き締めに向けての速度を上げるべきだが、それが必要なほど経済は強い、といったものだ。同じ内容の発言を受けて、前者については株式市場が好感し、後者については懸念したというのは、おかしなことだ。

とすると、何が先週の株価下落の「本尊」であったかといえば、先々週まで堅調な株価の推移が続き、いったん利食い売りを行いたい投資家が多かったところ、そのタイミングでブレイナード発言という売りの好材料がたまたま飛び出してきた、ということにすぎないのだろう。

短期的な「利食い売り」の局面だった可能性

「ブレイナード氏はハト派だから、そのハト派の人がタカ派的な発言をしたのが驚きであり、株価を叩き落した」との声も聞くが、ハト派のレッテルは貼りたい人が勝手に貼って勝手に驚いただけだろう。「ブレイナードショック」と呼ぶ人もいるようだが、それではブレイナード氏がかわいそうだ(筆者は、別にブレイナード氏のファンではないが)。

実際のアメリカ債券市場では、ブレイナード理事の講演を受けて、5日は10年国債利回りが前日比で0.15ポイント上がって、2.54%で引けた。これに対し2年国債利回りは0.09ポイントの上昇にとどまり、2.51%でその日を終えた。このため、10年債と2年債の長短利回りの逆転は、一時的に解消された(8日時点では、再逆転)。

長短金利の逆転は、債券投資家が先行きの経済を長期的に不安視していることを示しており、1年ほど先に景気後退に陥るサインだとされている。

ブレイナード発言直後に長短金利の逆転が解消されたということは、債券投資家はブレイナード氏の発言のうち、景気回復が力強いという部分を重視したと解釈される。その点で、株式投資家が金利上昇による経済への悪影響を強く意識したとすれば、両市場の反応が真逆だといえる。やはり、株価下落は単なる利食い売りだと考えたほうが整合的だろう。

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