新ななつ星&ふたつ星、JR九州「新社長」の鉄道戦略 過去の成功体験積み重ね、新幹線と一部リンク

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新幹線の運行開始に合わせて観光列車を走らせる戦略は、2004年九州新幹線新八代―鹿児島中央間開業時のはやとの風や、2011年の同線全線開業時の指宿のたまて箱を踏襲している。

西九州新幹線「かもめ」の座席(記者撮影)

ただ、今回は午前と午後で運行ルートを変えるという点で、この点でも進化しているといえる。また、ふたつ星の座席の生地は新幹線かもめと同じ生地も一部で採用されている。「新幹線とふたつ星で少しだけストーリーを被せた」(水戸岡氏)。新幹線と観光列車のリンクという点でもステップアップした。

ふたつ星は通常の指定席特急料金と運賃で乗車できる。たとえば長崎から武雄温泉までの通常期における運賃・料金は4500円だ。

「ななつ星と価格帯がまったく違うが、われわれがハードとソフトに込めている思いは同じ。この車両によってコロナ禍でも日本全体が元気になればよい」と古宮社長は力を込める。

初期からかかわった新社長

古宮社長がふたつ星のプロジェクトに参加したときの役職は総合企画本部長。車両というよりも不動産やホテルも含めた会社全体の経営計画を練るポジションだ。

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「なぜ自分が?」と思ったというが、今になってみれば合点が行く。唐池氏はななつ星の生みの親ともいえる存在だし、前任の社長だった青柳俊彦氏(現会長)は、2017年の観光列車「かわせみ・やませみ」の「ストーリー作り」のため、足繁く沿線に通った。ふたつ星は古宮氏がプロジェクトの初期からかかわった車両ということになる。

そして、ななつ星もこの秋にさらに進化する。4月9日、都内で開かれた説明会で、その概要が発表された。

ななつ星は6月出発分を終えた後、一部の車両で大掛かりなリニューアルを行う。乗車定員をこれまでの14室30人から10室20人に減らすと同時にサロンやバーラウンジなどを設置する。旅程やサービスの自由度を高めるなど付加価値を向上させ、10月からスタートする新たなコースでは3泊4日コースの料金は2人1室のスイートで1人115万〜125万円となる。

ななつ星の2号車をサロンに改造する(画像:JR九州、Design & Illustration by Eiji Mitooka + Don Design Associates)

ななつ星の総工費は30億円。豪華な車内で車窓を流れる景色を眺める贅沢は、「30億円の額縁」と評されるほどだ。水戸岡氏は、「たった9年で車両を変えたくはなかった」と話す。しかし、「ななつ星はトップランナー。デビュー当時は国内にこのようなクルーズトレインはほかになかったが、今は他社でも導入している。われわれは同じところにとどまっているわけにはいかない」(JR九州の福永嘉之鉄道事業本部長)。

水戸岡氏もその思いにほだされた。「ななつ星は豊かな時間を過ごせるように設計してきたつもりだが、もっと豊かに、楽しく、心地いい空間を作ることを追求してほしいと言われた」。1年前から取り組み、限られたスケジュールと予算の中でようやく形になったという。

「さらに10年後、20年後とリニューアルを重ねることで100年後も元気に走り続けているとうれしいなと思いながらデザインを進めている」と話す水戸岡氏は1947年生まれ。「私の年齢からいって、(ななつ星のリニューアルは)今回が最後の仕事」と覚悟を示す。

ななつ星のリニューアルとふたつ星の製造はどちらも小倉総合車両センターで行われる。「2つの車両の作業工程は分けて考えており、スケジュールに間に合うように計画している」(松尾英典クルーズトレイン本部長)という。

9月23日に西九州新幹線とふたつ星の運行開始を迎えた後は、リニューアルされたななつ星が10月15日に走り出す。あと半年足らず。古宮新体制は車両の改造と営業、サービス戦略など総力を挙げてこの秋の戦いに挑む。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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