新ななつ星&ふたつ星、JR九州「新社長」の鉄道戦略 過去の成功体験積み重ね、新幹線と一部リンク

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では、車両をどこから調達するか。

ふたつ星4047は、写真の「はやとの風」を改造する(記者撮影)

古宮社長によれば、現在運休中の肥薩線用の観光列車として投入された「いさぶろう・しんぺい」と「かわせみやませみ」を改造する案が営業サイドから出たという。しかし、もし肥薩線が復活すればこれらの車両にも再び出番がやってくる。そこで、肥薩線などで活躍し、3月に引退した観光列車「はやとの風」の車両2両を改造することになった。

「はやとの風」の車内(記者撮影)

また、2020年10月に運行開始した観光列車「36ぷらす3」のビュッフェや共用スペースが好評なことから、いさぶろう・しんぺいの予備車1両をビュッフェ、ラウンジ用の車両に改造して、3両編成の新たな観光列車に仕立てることになった。

デザインを手掛けるのは水戸岡鋭治氏。観光列車から新幹線までJR九州のほとんどの車両デザインを手掛けてきた。古宮氏はJR九州入社後、運輸部門に長く在籍し、水戸岡氏との付き合いも長い。お互いに気心の知れた仲だ。

水戸岡氏「海がテーマ、初めて聞いた」

キックオフセレモニーでは、挨拶に立った水戸岡氏から爆弾発言が飛び出した。

「海がテーマだというコンセプトの詳細は今日初めて聞いた」――。

もっとも、長年JR九州の車両デザインを行なってきた水戸岡氏だけに、コンセプトの打ち合わせをしなくても、「当然、海はテーマだろうと思っていた」。海の青い色に映える真っ白なデザインにしたのがまさにその証拠だ。

「ふたつ星4047」のデザインイメージ(画像:JR九州、Design & Illustration by Eiji Mitooka + Don Design Associates)

車両のあちこちに「オンリーワン」を重ねて、「ナンバーワン」の車両に高めたいと水戸岡氏は意気込む。オンリーワンのアイデアは水戸岡氏の頭の中にいくつもある。その1つが車両の外観のあちこちに施された金色のアクセント。その材料として車両では初めて金色のチタンを活用するという。実は小倉総合車両センターのある北九州市は、チタンの生産規模において世界有数の規模を誇る。経年劣化や変色がないチタンを車両の外観に活用すれば素材メーカーにとっても格好のPRになる。

水戸岡氏によれば、デザイン画は完成したが、図面はまだできていないという。車両の製造作業が運行開始ぎりぎりまで行われるのが水戸岡デザインの車両に共通した特徴だ。報道公開当日の朝まで作業をしていたこともある。「たとえスケジュールに余裕を持って完成させても、お客様が感動する車両でなければ意味がない」と水戸岡氏。これには古宮社長も「スケジュールは守って」と、苦笑いするばかりだった。

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