伊予灘ものがたり「2代目」登場、JR四国のこだわり 外部に頼らず製造、社員の自信につながった

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JR四国の観光列車「伊予灘ものがたり」の2代目車両。特急車両がベースの3両編成だ(記者撮影)
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金はなくてもファンは多い。それがJR四国の魅力である。

営業キロ数は853km。これはJR東日本の10分の1程度、JR北海道の3分の1程度の規模にすぎない。しかし、そこに12本もの観光列車が走っている。

同社の観光列車は3種類に大別される。ファミリー層に人気の「アンパンマン」のラッピングを施した列車、外観や内装が楽しい「予土線3兄弟」、そして近年数が増えているのが、車窓の景色と地元産の料理を楽しむ「ものがたり」シリーズである。

2014年7月に運行開始した「伊予灘ものがたり」がその端緒である。これが好評だったことから、2017年に「四国まんなか千年ものがたり」、2020年には「志国土佐 時代の夜明けのものがたり」と第2弾、第3弾が登場した。

社員がデザインした観光列車

「乗ってみたくなる観光列車がうちにも必要だ」――。2013年12月、鉄道事業本部長として観光列車戦略の陣頭指揮を取っていた半井真司氏(現・会長)がそのきっかけをこう語っている。当時の鉄道業界は観光列車ブーム。高額な製造価格ゆえに「30億円の額縁」と称されるJR九州の「ななつ星 in 九州」を筆頭にJRや私鉄が競うように新たな列車を生み出していた。

JR四国は国鉄時代に製造されたキハ47形を改造して観光列車に仕立てることにした。製作予算は「1億数千万円」(半井氏)。ななつ星と比較するのは酷だが、これがJR四国に出せる精一杯の金額だった。

ほかの鉄道会社が水戸岡鋭治氏や奥山清行氏といった外部の著名デザイナーが手掛ける車両デザインを売り物にする中、JR四国は自社の社員にデザインを託した。

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