伊予灘ものがたり「2代目」登場、JR四国のこだわり 外部に頼らず製造、社員の自信につながった

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乗客の目にこそ触れないが、JR四国の社員にとって2代目車両には自慢したいポイントがある。初代車両の製造は外部メーカーに頼る部分が多かったが、今回はかなりの部分を自社グループで行ったのだ。たとえば、以前だったらJR四国がイメージを伝えてメーカーが設計や製造を行っていたが、今回はJR四国が多くの部分において細部まで設計を行い、作業の多くも多度津工場のスタッフたちが手掛けた。

「作りが丁寧だなあ」。西牧社長は2代目車両を初めて見たとき、こう感じたという。外部の専門メーカーと変わらないほどの仕上がり。「他社でもこのくらいのことはすでにやっているのでしょうが、われわれでもできることがわかった」と松岡氏。今後の車両開発に向けての自信につながる。もともとは経費節減という狙いがあったがそれ以上の成果があった。

「四国を知ってもらう宣伝ツールに」

製造費は非公表だが、2両編成から3両編成になったので初代の車両の1.5倍程度とみてよいだろう。運行コストも増える。たとえば、3両編成となるため燃料費がかさみ、初代では6名前後が乗車していたアテンダントも3号車専属として1人増える。一方で、収入も増える。3両編成となったことで定員が増えるほか、初代車両の乗車には運賃とグリーン料金が必要だったが、2代目車両は特急列車として運行するため、特急料金が上乗せされる。

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そうはいっても、「伊予灘ものがたりが直接的に収益を大きく押し上げるとは考えていない」(西牧社長)。「四国の観光情報を全国に発信し、四国を知っていただく大きな宣伝ツールにしたい」と意気込む。

人口減少にコロナ禍が追い討ちをかけ閉塞感漂うJR四国にとって、久しぶりの明るい話題だ。運行開始は4月2日。この日までに感染状況が落ち着き、沿線の人たちが総出で新たな列車の船出を祝うことができると信じたい。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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