新ななつ星&ふたつ星、JR九州「新社長」の鉄道戦略 過去の成功体験積み重ね、新幹線と一部リンク

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古宮氏からは、ななつ星開発に関する裏話も明かされた。運輸部長時代、当時社長だった唐池恒二相談役から九州を周遊する豪華列車のアイデアを打診されたときは、反対したという。「1人1日1万円として定員30人なら1日30万円。1年で1億円。車両価格が20億円だとしたらとても採算が取れない」。

古宮社長や水戸岡氏がふたつ星4047について語った「改造キックオフセレモニー」(記者撮影)

しかし、その後、唐池氏からななつ星のプロジェクトリーダーに指名され、開発の指揮を執る。水戸岡氏らと海外の豪華列車について研究を重ねるうちに、「料金が高くても価値があれば受け入れられるはず」と確信した。その読みは当たった。

2013年の第1期は、3泊4日コースの料金は2人1室のスイートで1人38万円。これでも十分高額だが、高い人気を背景に、サービスを充実したうえで値上げ。直近の2022年3〜6月出発分は同83万〜85万5000円となった。

コンセプトは「D」と「S」をつねに意識

JR九州は同社の観光列車を「D&S列車」と呼んでいる。Dはデザイン(Design)、Sはストーリー(Story)の頭文字。水戸岡氏の手による車両デザインと沿線に伝わる歴史や伝説などのストーリーを指し、デザインと物語のある列車という意味を込めている。

「はやとの風」とアテンダント(記者撮影)

「昔は当社でも観光列車と呼んでいた」と、古宮社長は言う。ほかの鉄道会社にもあるような「乗って楽しい」列車である。1996年運行開始のいさぶろう・しんぺいや2004年運行開始のはやとの風はこの時代に造られた。しかし、2009年の「海幸山幸」、2011年の「指宿のたまて箱」の頃から、沿線の「ストーリー」を車両コンセプトに取り入れるようになった。それに呼応するかのように水戸岡氏のデザインも迫力の度を増した。「今ではD&Sをつねに意識して開発するようにしている」(古宮社長)。

ふたつ星4047の車内イメージ(画像:JR九州、Design & Illustration by Eiji Mitooka + Don Design Associates)

車内デザインはより工夫が凝らされ、ラウンジカーも導入される。JR九州の観光列車はどんどん進化している。「デザイナーの力量は成功体験の積み重ねで決まっていく」と水戸岡氏は言う。はやとの風やいさぶろう・しんぺいなどで培った経験がななつ星に結実した。ふたつ星ではさらに付加価値を高めたいという。

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