田辺三菱製薬が注射薬を自主回収 業績影響は必至か
田辺三菱製薬は26日、子会社の田辺三菱製薬工場が栃木・足利工場で生産している医療機関向け注射薬について、製品の安全性を確保するために出荷前に行う試験を実施していなかった製品がある、と発表した。厚生労働省は同日、足利工場に立ち入り調査を行った。
対象となったのは「リプル注」、「パルクス注」、「リメタゾン静注」、「パズクロス注」の4製品。田辺三菱は、大正製薬が販売している「パルクス注」をのぞく、3製品6品目、約200万本を自主回収する。同日、東京都内のホテルで土屋裕弘社長(=写真=が会見した。
経営責任について土屋社長は「医薬品メーカーとしての信頼を失う事態になったことは、申し訳なく思っている。今は危機的状況を乗り切るのが最大の責務」と事態を受けた辞任については否定した。また回収や今回の不祥事に伴う業績への影響については、「現時点では算定していない」(田辺三菱首脳)としている。
会見によると、昨年9月に足利工場で4製品の品質試験を担当する社員が試験をしていない、との告発があり、社内調査の結果、試験は行われていた、と告発を覆した。だがその後、報道機関による取材が始まったことから、社外弁護士による再調査を実施。担当者が一部試験をしていないことを認めたことや試験に使う製品数が少ないことから「試験をすべて実施していることを保証できない」と結論づけた、という。
田辺三菱製薬は昨年4月に、やはり子会社による血液製剤の試験データ改ざん問題で厚労省から25日間の業務停止命令を受けた。社会的な指弾を受けたことから、それによる業績悪化が懸念されたが、現在まで影響は、ほぼ皆無だった。ただ今回は回収が行われることから、費用発生に伴う今期業績への直接の影響や、再び社会的信頼を落とす事態を引き起こした事による間接影響は避けられないようだ。
なお同社は28日に2010年4~12月期決算を発表する予定。「東洋経済オンライン」は今来期業績予想について、見直すための具体的数値や算定の材料が乏しいことから従来数字を現時点で据え置く。決算数字や今後の展開を見ながら、精査する。
(鶴見 昌憲 =東洋経済オンライン)
《東洋経済・最新業績予想》
(百万円) 売 上 営業利益 経常利益 当期利益
連本2010.03 404,747 61,475 61,649 30,253
連本2011.03予 401,000 72,000 72,000 38,000
連本2012.03予 420,000 74,500 74,500 39,500
連中2010.09 204,684 40,155 40,473 22,704
連中2011.09予 208,000 36,000 36,000 19,000
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1株益¥ 1株配¥
連本2010.03 53.9 28
連本2011.03予 67.7 28
連本2012.03予 70.4 28
連中2010.09 40.5 14
連中2011.09予 33.9 14
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