5年後、トヨタ最大の敵はグーグルになる 競争領域の“高次元化”が止まらない!
自動車というハードウエアがネットワークに接続され、ハードウエアの使い勝手が、ネットワークの先にあるサービスプラットフォームに左右されるようになれば、「ハードウエア単独の競争」ではなくなる。
教訓にしたい、日本の電機産業の惨敗
こうした自動車産業の状況と構造的に酷似しているのが、アップルやサムスンに苦杯をなめた、数年前の日本の電機産業だ。
かつてスマートフォンが登場した際には、デジタルカメラや携帯型ゲーム機、ナビゲーションといった機能が次々と携帯電話に取り込まれ、それまでスタンドアローンであったハードウエアが、移動通信システムによりネットワークに接続された。その結果、「ハードウエア」から「システム」へ、競争領域がより高い次元にシフトしたのである。
このようにして、ハードウエア専業メーカーは、競争領域の「高次元化」に巻き込まれ、これまでの競争優位がもろくも崩れ去ってしまったのだ。
日本人はこうした動きを「ハードとソフトの戦い」ととらえがちだが、それは違う。「ハードとシステムの戦い」だと認識すべきだろう。
このような「敗戦」を振り返ったとき、日本の電機産業の反省として言えるのは、競争領域をシステムにまで広げられることで、ハードウエアの領域での競争領域を奪われてしまったということである。
過去の日本の電機産業の「負けパターン」を顧みれば、トヨタをはじめとした日本の自動車産業が練るべき策は明らかだ。自動運転技術も、オートパイロットから自律運転へと変化していくのを前提としたとき、日本の自動車産業が、今後、いかに「システム」で優位に立つことができるかが重要である。
そのシステムの競争優位を決定づけるのは何か。筆者は、「ハードウエア」「ICT」「エネルギー」の3つの要素と考える。
トヨタなど日本の完成車メーカーは、ガソリン車をはじめハードウエアの作り込みに競争優位があったのは、多くの知るところである。今後、エネルギー調達に強みを持たないトヨタが勝ち抜くには、「ICT」が焦点になってくる。
競争領域の高次元化はとどまることを知らない。グーグルは衛星動画を撮影することができるSkybox Imagingを買収し、テスラの創業者であるイーロン・マスクCEOやアマゾンのジェフ・ベゾスCEOも宇宙事業を行っている。今後、「Google Z」というプロジェクトが生まれ、その領域が宇宙であった場合、これまで日本の産業を牽引してきた電機や自動車産業は、その競争領域の高次元化に、はたしてついていくことができるであろうか。自動運転車は、そうした「超長期の競争領域シフト」の前哨戦とも言える。
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