5年後、トヨタ最大の敵はグーグルになる 競争領域の“高次元化”が止まらない!
両社は共に世界を代表する企業であるが、共に課題を抱えている。トヨタがグーグルに対して先手を打つことで、自動車メーカーとして生き残り、自動運転車の時代でも覇権を握り続けることができる可能性がまだ残されている。もし、トヨタがそれに失敗すれば、日本人が「産業の最後の砦」ととらえている自動車産業が、崩壊する可能性もある。
筆者は自動運転車が自動車の産業構造を変えるだけではなく、鉄道、電力、通信、金融業界や、それらの監督官庁による規制を含めた「社会システム」にも大きな影響を及ぼすと考えている。そして最終的には自動運転車は、「都市デザイン」を変えるほどの影響がある強力なアプリケーションだと考えている。
実際、グーグルのトップマネジメントも、グーグルグラスをはじめとしたハードウエアを中心に開発するプロジェクト「Google X」では、「自動運転車が最も大きなインパクトを与えるだろう 」と語っている。
電気自動車が優勢になれば、日本勢は危うい?
そもそもグーグルが、世の中の仕組みそのものを変えるきっかけにもなりうる自動運転車に期待を寄せるのはなぜか。それは「都市や社会システムに大きく関係するハードウエアにおいて、主導権を握りたい」と考えているからであろう。
自動運転車の駆動プラットフォームが、ガソリン車のままなのか、それとも電気自動車なのかの議論はあるが(燃料電池車の駆動プラットフォームは電気自動車である)、充・給電の技術的変化を考慮すれば、電気自動車ベースの自動運転車のほうがガソリン車ベースのそれと比較すると、変化余地や拡張性があるように見える。
自動車が電気で動くようになれば、日本の自動車メーカーが競争優位を確立してきたエンジンは不要になる。
電気自動車では、駆動プラットフォームに必要な基幹部品は、主にはモーター、インバーター、バッテリーだ。電気自動車では、ガソリン車と比べて部品点数は大幅に減少する。これまで必要だった部品が必要なくなり、結果、自動車の「バリューチェーン」が大幅に短縮化されることになる。
バリューチェーンとは、ひとつの製品が研究開発を経て、原材料購入・製造から顧客に届くまでの間で、「どこで付加価値が生み出されているか」に注目したつながりを言う。高品質な製品を最適なタイミングで顧客に届けるためには、自社や下請けを含めた多くの関係者のハイレベルな仕事が要求される。そのため、バリューチェーンが長い(社内外の関係者が多い)ほど、その分野の監督官庁との人脈や事業経験、技術などの蓄積のない新規参入者にはハードルが高くなる。
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