巨額の不正流出事件から4年。もはや復活不可能に見えたビットコイン相場は米国主導で再び活況を取り戻した。暗号資産を使ったNFTの購入、そしてNFT取引が広がるメタバースにもビジネスの機会が広がっている。
かつては日本が中心だった暗号資産(仮想通貨)ブームが、米国から戻ってきた。今回の勢いや産業へのインパクトは比較にならないほど強い。
さかのぼること4年。2018年1月26日の夜、大手交換所のコインチェックの本社がある東京・渋谷駅南口の一角は喧噪に包まれていた(現在は移転)。
約580億円相当の暗号資産が流出した──。その日は昼から「大事件が起きた」との情報が飛び交っていた。しかしベンチャー企業だったコインチェックの対応は後手に回り、顧客や記者が本社前へ押しかける事態に発展。結局、会社が正式な発表と会見を行ったのは同日深夜だった。
当時、金融庁は暗号資産を業界として育成していく方針だった。17年4月施行の改正資金決済法により、世界で初めて仮想通貨を法律で定義し交換業者の登録制を導入した。同9月には業者の一斉登録を行い、業界各社は合同会見を開き喜びの表情を浮かべていた。
しかしコインチェック事件で風向きは一転、金融庁は業界の規制強化に踏み切った。登録済みの交換所を含め、行政処分を次々に実施。一部の登録業者については「当局に事実と異なる説明を行う企業風土など経営管理態勢に問題あり」とまで言及した。
これに対しある交換所の幹部は、「まるで地獄のような時期だった。官僚たちのルサンチマン(怨恨・遺恨)に翻弄された」と恨み節を漏らすほどだ。
インフレ対策以外の要因
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