中国の経済力、軍事力の成長に伴い、世界との亀裂が深まっている。
1971年7月9日、ヘンリー・キッシンジャー米大統領特別補佐官(当時)が極秘訪中し、中国と世界の関係は改善に向かった。それからちょうど50年の今、中国と世界の関係は米中対立で危機に突入している。
米大統領のために世界の動向を予測する国家情報会議(ナショナル・インテリジェンス・カウンシル)は3月、2040年までを見通した『Global Trends 2040』を発表した。タイトルは「より争われた世界(A More Contested World)」。注目すべきは、今後の世界を占った5つのシナリオのうち3つを対中競争に充てたことだ。
1つ目は「民主主義の再生」という楽観シナリオ。中国の衰退とともに米国の主導権が続くという内容だ。2つ目は「漂流する世界」という悲観シナリオで、中国1強の勢いが増すというもの。3つ目は「競争的共存」という中間で、米中は争いながらも共存の道を歩むという中身だ。
なぜ米国はここまで中国への対抗意識を強めるのか。米ハーバード大学のグレアム・アリソン教授は、「経済力での対等のみならず、中国の躍進は『米国こそが世界のトップ』というアイデンティティーそのものを脅かす存在だからだ」と指摘する。同教授によると歴史上、新興国の成長とともに既存の覇権国との力関係が崩れた場合に戦争が起こりやすくなる。古代ギリシャの歴史家トゥキディデスが説いたアテネとスパルタのペロポネソス戦争を挙げ、同様の事例を「トゥキディデスのわな」と呼ぶ。「第1次世界大戦時の覇権国の英国と新興国のドイツも同様だ。今の米中は『トゥキディデスのわな』に陥っている」と話す。
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