シリコンバレー化するビジネススクール

ハーバード大MBAの3割はプログラマー

ニューヨークにあるグーグル社所有ビルで、議論を交わすコーネル大学のコンピュータサイエンスの大学院生(写真:Richard Perry/The New York Times)

毎週火曜の午後にはスタジオセッションをやる。集まった学生が輪になって座り、進捗状況を報告したり、問題点を話し合ったり、教員や外部の人の批評を受けたりする。マンハッタンのルーズベルト島に建設中のキャンパスが2017年に完成するまでは、ダウンタウンにあるグーグル社所有のビルで開講している。

コーネル・テックの教授陣は、「起業精神を持つテクノロジー製品マネージャー」の育成を目指している。デジタル技術の拡散に伴ってそういう役割がどこでも必要になるというのだ。

経営に特化しない、コーネル・テックの生徒たち

実際、従来のMBAタイプではない学生たちが入学した。ステイマンによると、約75%が学部でSTEM系の学位を取得している。その割合はコーネル大学ジョンソン経営大学院(ニューヨーク州イサカ)なら3分の1だという。

28歳のアマンダ・エマヌエルはコーネル・テックでビジネスを学ぶ典型的な受講生といえる人物だ。カナダのカールトン大学でコンピュータとデザインを専攻し、夏休みにソフトウェア・エンジニアとしてジェネラル・ダイナミクス(GD)社でインターンをした。だがその一方で、ファッション界で起業して、女性のボディの美しさを生かす服のデザインのため、自作のアルゴリズムを役立てたという。

彼女がコーネル・テックに入学したのは、豊かなテクノロジー環境に身を置いてビジネスの才覚に磨きをかけるためだ。受講料は9万3000ドル。普通、MBA課程といえば2年だがここは1年で修了できる。それも彼女にとっての魅力だ。「2年間休んだらすごく不利になる。私たちが目指すような仕事がある会社は、2年前には存在していなかった場合もある」。

パスはコーネル・テックで最高起業責任者という肩書を持つ。スタジオセッションを指導して、学生がこなす課題に批評を加え、コーチ役を果たしている。ツイッター在籍中にはその商業的な大成功を味わった。後になって本人は、スタートアップ企業への投資というクジで大当たりしたような「現実的罪悪感」を覚えたという。

現在39歳の彼はコーネル大学の卒業生。専攻はコンピュータ・サイエンスだった。「何か共同社会にお返しをしたい」気持ちが湧いたのだという。そこで考えたのが、特にテック系企業やスタートアップ企業には「均衡のとれた文化」が必要だという信念も含めて、展望を持つことの重要性だった。

今日の企業にとってはエンジニアが最も貴重な財産になるとしても、エンジニアの発想には弱点があるとパスはみる。目の前にあるトラブルをひとつずつ解決していく傾向があるというのだ。

「起業家は、実は経営上の問題点が見えていないことが多い。問題点を見つけ出すことや、問題点を新しく定義することが大切なのだ」とパスは説く。「もっと統合性のある大局的な見方をしなければならない」。

遠くまで水平線が広がっていくような視点を持つ人材を育成しようというMBAコースなのだという。加えて技術のノウハウも持ち合わせ、俊敏に経営判断も下せるような人材だ。「大学院教育の新たな軸(ピボット)」になるとパスは語った。

(執筆:Steve Lohr 記者、翻訳: 石川眞弓)

(c) 2014 New York Times News Service

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