オフィス市況は今年3月まで空前の好況だった。不動産サービス大手CBREによれば、3月の都内のオフィスビル空室率はわずか0.9%。一般的に5%が好不況の境目といわれる中、ほぼフル稼働の状態だ。
企業は好調な業績を背景にオフィス投資を拡大した。分散していた拠点を統合・集約したほか、働き方改革でシェアオフィスの利用も増えた。さらに人手不足を補うための採用強化で、従業員を引きつけられる都心の高級ビルのニーズが高まった。
その顕著な例が成長力の著しいIT企業だ。セールスフォースは2021年、現在のJPタワー(東京・丸の内)から日本生命丸の内ガーデンタワーへ本社を移転させる。移転先の坪数は推定9000坪超。現状比3倍だ。従業員数も約1500人規模から24年までに約3500人へ増える。IT企業の増床ニーズがオフィス需要を牽引し、都心のオフィスビルは瞬く間にのみ込まれていった。
「近・新・大」。駅から近く、新しく、1フロア当たりの面積が大きいオフィスビルが主流になった。下図に示すように、森ビルの調査では、20年以降の新築オフィスビルの大半が、延べ床面積10万平方メートル以上で、かつ都心3区(千代田・中央・港区)に立地する。
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